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2018/03/01

黒真珠

概要(あらすじ)
多くの書籍で「怪盗紳士ルパン」の最後から二作目に収録されている作品。
ザルティ伯爵夫人の自宅に、黒真珠を盗みに入ったアルセーヌルパン。ところが夫人はすでに殺害されており、黒真珠もなくなっていた!
しかし事情をしらない警察は、無実の(?)ルパンに殺人の容疑をかけたり、見当はずれな人物を逮捕したりして右往左往。真犯人は誰なのか?そこでルパンは・・・。

読後の感想など
ルパン登場の際に、誰がルパンなのか予想がつきやすい作品。ルパンの出番を待っている読者にとってはうれしいです。作品も短く、読みやすいです。

入手できる書籍
基本的には「怪盗紳士ルパン」の収録作品ですが、いくつかの児童書などでは別になっているので注意が必要です。
偕成社全集版 第1巻「怪盗紳士ルパン」
新潮文庫ルパン傑作集(IV)「強盗紳士」
ハヤカワミステリ文庫「怪盗紳士ルパン」
ポプラ社版第2巻「ルパンの大失敗」
講談社青い鳥文庫「怪盗ルパン真犯人を追え!」
岩波少年文庫「怪盗ルパン」
偕成社文庫「怪盗紳士ルパン」
角川つばさ文庫「怪盗紳士アルセーヌ・ルパン」

ストーリー
※短くするため一部改変しております。
◆◆登場人物◆◆
料理人
召使ダネーグル
刑事
ガニマール判事
ルパン

#1伯爵夫人の部屋
伯爵夫人(実際は、キャストの一人にかつらをかぶせ、伯爵夫人だったことにする)が寝ているところにルパンが押し入る。
暗がりの中を進むルパン。
ルパン「黒真珠・・・いっただき」

左手がじゅうたんに落ちている燭台に触れる
ルパン、首をかしげる。
すぐそばには置時計も落ちている。
はらばいになって進むルパン。

ルパン「あっ」

ルパンの手に血痕がべったりついている。
ルパンは懐中電灯を取り出してあたりを照らす。
伯爵夫人の死体を見つけ

ルパン「死んでる・・・」

あたりを見回す。

ルパン「はっ・・・黒真珠は?」

黒真珠がはいっているはずの宝石箱を見つけ、開くが中が空っぽ。

ルパン「くそ」

あたりを見渡し、しらべものをする。壁の状態、ドアの状態など。

ルパン「なるほど、そういうことか」

#2
料理人、刑事、判事が話し合っている。

判事「死亡推定時刻は、夜の11時20分。この止まった置時計の時間とも一致します」
ガニマール「なるほど、ザルティ伯爵夫人は、夜中のうちに殺され、黒真珠が奪われた」
料理人「はい」
ガニマール「ザルティ伯爵夫人は財産家で有名でしたからね。それにしても、伝説の黒真珠までお持ちだったとは」
料理人「はい、そうなんです。婦人は『これだけは絶対に誰にも渡さない』とおっしゃって、いつも身に着けていらっしゃいましたわ。そして、夜になると、自室に黒真珠をしまって、おやすみになる習慣でした」
判事「彼女の贅沢振りはパリ中の話題に上ってましたからね」
ガニマール「お2人は、伯爵夫人につかえるため、この屋敷で・・・いつから一緒に暮らしていたんですか」
料理人「1年ほど前です」
ガニマール「なるほど」

ガニマールと判事、部屋を歩き回っているが、死体のあった場所に落ちたボタンを見つける
ガニマール「このボタンは」

料理人、はっとして
料理人「ダネーグルの上着のボタンですわ、どうしてこんなところに」
ガニマール「ダネーグル?」
料理人「はい、新しくきた召使です。今日は13時に出勤予定ですが」
ガニマール「ダネーグルの部屋を調べさせてもらおう」

判事、上着をもってやってくる
判事「警部!ダネーグルの上着に、血痕が」
警部「なるほど、ダネーグルが夜中のうちに押し入ったか。誰かが侵入した形跡は?」
料理人「いえ、ありません・・・。第一、私が起きた朝8時には、玄関にも勝手口にも、厳重にドアが開いていたんです」
警部「そんな!」
判事「密室殺人・・・ですか」
警部「ダネーグルをつかまえろ、凶器や合鍵を持っているにちがいない」

#3取調室
ダネーグル「だから言ってんだろ、俺がやったってんなら、証拠を見せろよ、凶器も、合鍵も見つかっていないのに、疑われても困るね」
警部「しかし血痕のついた上着が・・・」
ダネーグル「そんなの、真犯人が俺に濡れ衣を着せるためにやったのさ」
警部「アパートの管理人が午前3時ごろ、建物の中に入る人物を見かけたと証言している」
ダネーグル「俺じゃねえし。第一時計の針なんて、好きに動かそうと思えば動かせるだろう」

判事がやってきて、警部が立ち上がり、2人で話し合う。
判事「警部、彼は犯人ではないかもしれません」
警部「なに?アル中、傷害事件2回の前科、あいつ意外に誰がいるんだ」
判事「もうひとつ新しい情報があります。伯爵夫人の妹の証言です。伯爵夫人は、黒真珠のありかを、遺産相続人である妹に手紙で伝えたのだそうです。ところがその手紙が、何者かに盗まれた様子で・・・。」
警部「なに!盗まれた・・・まさかルパンがからんでいるのか」
判事「警部はなにかにつけてルパンの影を見つけるんですね」
警部「どこにでもルパンの影を見る・・・それは、やつがどこにでもいるからだ!やつのことはこのガニマールがしとめる!」
判事「なんにせよ、ダネーグルを逮捕するには証拠不十分ですね」
警部「くそ・・・」

釈放され、ダネーグルが取調室から出て行く。
判事「なぞは深いですね。合鍵も凶器も見つかっていない。犯行時刻は23:20ですが、犯人と、管理人が見かけたという、午前3時に訪れた人物は同一人物なのか・・・合鍵がないとすると、犯人はどうやって建物に押し入り、どうやって出たのか」


#4 居酒屋
釈放されたダネーグルが変装して酒を飲んでいる。男が話しかける

ルパン「乾杯といこうじゃないか」
ダネーグル「あん?じゃあ、乾杯」
ルパン「乾杯、ダネーグル」
ダネーグルが飛び上がる
ダネーグル「俺は、ダネーグルじゃねえ、アナトールってんだ」
ルパン「今はそう名乗っているようだがね」

名刺を取り出して渡す
ダネーグル「警察のだんなですかい。」
ルパン「前はね。でも今はもっと儲かる仕事をしてるんだ。君が協力してくれれば」
ダネーグル「なぜ俺が協力しなきゃいけない?」
ルパン「するに決まってるさ、拒絶なんかできっこない」
ダネーグル「どういうことだ」
ルパン「手っ取り早く説明するとね、お前が盗んだ黒真珠を渡してほしいんだ」
ダネーグル「そんなもの持ってない、俺が犯人だとでもいうのか」
ルパン「お前が犯人だ」
ダネーグル「残念ながら警察の見解は違っててね、だんな、さっき釈放になったばかりなんだ」
ルパン「事件の3週間前、鍵をこっそりくすねて合鍵を作ったろ」
ダネーグル「合鍵はあいにく見つかっていなくてね、証拠不十分で・・・」
ルパン「ここにあるさ」

合鍵を見せる。しばらくの沈黙。
ルパン「そして、ナイフを買ったのも合鍵を作ったのと同じ日だ。刃が三角形で溝がついている」

ナイフを見せる。
ダネーグル「はは、ナイフと合鍵があるからってなぜそれが俺のものだっていうんだ」
ルパン「部屋のクローゼットの中にお前の指紋がついている。お前はクローゼットに隠れていたとき、血で汚れていた手で壁を触ってしまった。刑事も判事も気づかなかったが、私は見つけた」

ダネーグルがうなだれる
ダネーグル「真珠を返したらいくらくれる」
ルパン「金はやれん。ナイフ、合鍵、指紋。協力しないならこれをお上に提供してやる。どうだ」

ダネーグルが両手で頭を抱えている。
ダネーグル「なぜお前、それを知って」

#5 ルパンの回想 部屋

ルパンが死体の前で考え事をしている

ルパン「俺は、死体を見つけてすぐ犯行の経過を推理した。犯人はダネーグルにちがいないと確信した。そして、ダネーグルが盗んだ黒真珠を手に入れるために何をしなけければいけないかを考えた。」

ルパンがナイフを拾い、鍵を手に入れ、ドアに鍵をかけ、ボタンを落とすしぐさをしながら
ルパンアナウンス「ダネーグルの有罪を決定付ける証拠をまずは、隠滅した。凶器のナイフを拾い、鍵穴に刺しっ放しになっていた合鍵を抜き取った。ドアにも鍵をかけた。しかし、犯人をいったん逮捕してもらわなきゃ困る。そこで、上着のボタンを現場におとしておいた。逮捕と釈放、このふたつをセットにしなければ黒真珠は手に入らないという天才的なひらめきが訪れたんだ」

#6 居酒屋

ルパンが追い詰める。
ルパン「さあ、黒真珠を渡せ。一時間以内だ」
ダネーグル「お前は何者だ」
ルパン「アルセーヌ、ルパン」

ダネーグル、飲み干そうとしていたワインを噴出す。
ダネーグル「なるほどな(苦笑い)・・・ついてこい」

#7川べり
舞台の上に、大き目の石が13個並んでいる。
ダネーグルとルパンが並んで歩いてくる。

ダネーグル「ここだよ」
ルパン「ここってどこだ」
ダネーグル「目の前だよ」
ルパン「何処だ」
ダネーグル「石の間だ」
ルパン「どの」
ダネーグル「自分で探せよ」
ルパン「じらそうってのか」
ダネーグル「そうじゃないさ、でも俺だって野垂れ死にたくはねえ」
ルパン「なるほど、いくらいるんだ?」
ダネーグル「アメリカ行きの三等船室代くらいは・・・それから当面の生活費に100フラン」
ルパン「よし、気前よくいこうじゃないか。100じゃなくて200やるからさっさと言え」
ダネーグル「12番目と13番目の石の間だ」
ルパン「よくもこんな人通りの多いところに・・・深さは?」
ダネーグル「10センチほどかな」
ルパンが石をどけると、黒真珠が現れる。
ルパン「ほら、約束の200フランと切符代だ」
2人、分かれる。

#8 ルパンの自室
ニュースの声「アルセーヌ・ルパンが、かの有名な黒真珠をザルティ伯爵夫人殺害犯から取り返したとの声明を出しました。警察は、伯爵夫人殺害犯とルパンは同一人物ではないと見て捜査を進めています」

ルパン「(黒真珠を眺めながら)次にこの宝を持つことになるのは、ロシアの貴族か、はたまた欲深いインドの王様か。この美しくて贅沢な一品は、いったい次は誰の首を飾るのだろう」

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