獄中のアルセーヌ・ルパン
概要(あらすじ)
ルパンシリーズ第二作。
カオルン男爵のもとにルパンから盗みの予告状が届く。そんなばかな!ルパンは獄中にいるはずだ!
それとも・・・まさかルパンはすでに脱獄してしまったのか!?
そんなはずはない、しかし・・・。
ガニマール警部が事件を追う!
読後の感想など
第一作で逮捕されたルパンの話。ルパンはあまり登場しないのですが、最後に登場してくれます。
そして、シャーロック・ホームズの名前がここですでに引き合いに出されています。
本人は登場しないのですが、今後の展開を予想させます。
入手できる書籍
第二作ですので、入手は容易。以下の書籍に収められています。
偕成社全集版 第1巻「怪盗紳士ルパン」
新潮文庫ルパン傑作集(IV)「強盗紳士」
創元推理文庫「怪盗紳士リュパン」
ハヤカワミステリ文庫「怪盗紳士ルパン」
ポプラ社版第1巻「怪盗紳士」
講談社青い鳥文庫「怪盗ルパン怪紳士」
岩波少年文庫「怪盗ルパン」
偕成社文庫「怪盗紳士ルパン」
早川書房ポケット・ミステリ「強盗紳士ルパン」
角川つばさ文庫「怪盗紳士アルセーヌ・ルパン」
ストーリー(抜粋)
#1 カオルン男爵邸
召使「マダム、お手紙です」
夫人「え?なにこれ、刑務所から?まあ、差出人名がないのね。・・・こ、これは・・・!!」
ルパン「貴殿のお持ちのルーベンスおよびワトーの絵画は、大変私の趣味にかなうものであります。つきましては、宝石類と絵画をおさめたガラスケースをそっくりそのまま頂戴したいと存じます。荷造りをして、ばてぃにょーる駅止めで発送してください。一週間以内にお送りいただけない場合、来る9月27日の深夜、私自ら盗りにうかがいましょう。アルセーヌ・ルパン」
召使「どうなさいました?」
夫人「ルパンから予告状が!」
召使「えっ!?あの有名な怪盗が?」
夫人「絵画のことはともかく、ガラスケースに一緒に宝石を隠していることは内の者以外誰も知らないはずよ!なぜルパンはそれをしっているのかしら?」
召使「警察にしらせましょうか?」
夫人「いいえ、・・・通報してもいたずらだと笑われるのがオチでしょう・・・。そうだ!ガニマール警部に連絡しましょう」
召使「警部に?」
夫人「そう、ガニマールはルパンを捕まえることに執念を燃やしている警察官よ。きっとこの予告状を見たら動いてくれる!彼と直接連絡をとる方法を調べて!」
召使「わかりました!」
#2 川べり
ガニマール「なるほど。しかし、これはルパンのものではないでしょう、きっとただのいたずらです」
夫人「そんな・・・あなたならきっと真剣に話をきいてくれると」
ガニマール「残念ですがカオルン夫人、ルパンはすでに牢屋にいるのです」
夫人「えっ!?」
ガニマール「先日、プロヴァンス号の船上で捕まえたのです」
夫人「本当ですか?確かに、本物のルパンを捕まえたのですか」
ガニマール「確かに本物です」
夫人「もし彼が、すでに脱獄していたら?」
ガニマール「サンテ刑務所からは誰も脱獄できんよ、たとえそれが、アルセーヌ・ルパンであっても。」
#3 カオルン男爵邸
夫人「ルパンじゃなかったみたい」
召使「そうなんですか。マダム、あのまた、電報が」
夫人「なにかしら!?」
ルパン「バティニョール駅に荷物なし。明日の夜は覚悟されたし。アルセーヌ・ルパン」
夫人、電話をかける
ガニマール「もしもし」
夫人「ガニマールさん、やっぱり・・・ルパンです!また、電報がきたんです、ルパンから!」
ガニマール「そんなばかな」
夫人「どうか、お願いです」
ガニマール「しかし、ルパンは刑務所にいるというのに、警察組織を動かすわけには・・・」
夫人「おいくら差し上げたらよろしいですか?」
ガニマール「なんだって?」
夫人「私はお金持ちです、あの大切な絵を守るためならなんでもします。警察が動けないなら、個人的に、人を雇って見張っていただけないでしょうか」
ガニマール「そういうわけには」
夫人「秘密はまもります。3000万円で足りるでしょうか」
ガニマール「そこまでおっしゃるなら見張りはつけましょう。でも何度も言いますが、ルパンは今刑務所にいるのです。人を雇うお金なんて、どぶに捨てるようなものですよ」
#4刑務所
ガニマール「君はルパンかね」
ルパン「そうですよ」
ガニマール「にせものじゃないだろうな」
ルパン「正真正銘、僕ですよ」
ガニマール「君がつかまったとき、正直わざとじゃないかと疑ったんだがね」
ルパン「おもてなしできなくて残念だなあ。冷たい飲み物ひとつないんだから!いや、本の仮住まいですよ。出て行きたくなったら出て行きます」
ガニマール「それにしては、ずいぶん長くいるじゃないか」
ルパン「ある、女性のことを忘れなければいけないんです・・・。美しい人だった。この恋の傷を癒さなければならないときに、俗世間の荒波は厳しすぎる・・・。隔離療法ってやつですよ!」
ガニマール「君は刑務所を何だと思ってるんだね!もういい、どうやら本物のようだからな」
#5 カオルン男爵邸夜
夫人「この屋敷には、二つの門があります。入り口はその二つだけです」
ガニマール「あの井戸へ通じる道は?」
夫人「地下道があったようですが、すでに埋め立てられています。」
ガニマール「肝心の絵はどこに?」
夫人「この隣の部屋です」
ガニマール「隣か。では私がこの部屋の扉を見張る。みんな、しっかりみはってくれたまえ、いいな!」
部下「はいっ!」
夫人「これで安心して眠れるわ」
#6 カオルン男爵邸朝
夫人「おはようございます、何もありませんでしたか?」
ガニマール「もちろん、誰一人来ていません。何も起こりませんでしたよ」
夫人、隣の部屋へ移動。
夫人「きゃあ!」
ガニマール「どうしました?」
夫人「絵が!絵がない!」
ガニマール「なに?そんなばかな!この部屋を見張っていた見張りは?」
召使「あの・・・寝ているようなんですが」
ガニマール「なに?おい!起きろ!!・・・だめだ、寝ているんじゃない。眠らされたんだ」
夫人「ルイ16世ゆかりの蜀台もない・・・マリアの聖母像も・・・(泣き出す)」
ガニマール「おのれ、ルパンめ!!」
夫人「私のコレクションの中でも粒よりのものばかりが・・・」
警察官がおきる
警察官「う、うーん」
ガニマール「おい!しっかりしたまえ!絵は盗まれてしまった!君は誰かを見なかったか?」
警察官「いえ、誰も見ませんでした」
ガニマール「じゃあ一体誰に眠らされたんだね?」
警察官「わかりません」
ガニマール「何か飲食したか?」
警察官「その、水差しのなかの水を少し」
ガニマール「そうか、その水を調べろ!それから屋敷にほかの入り口がないか、徹底的に調べるんだ!」
#7 刑務所
ルパン「やあ、これは警部、またまたお出ましいただけるとは」
ガニマール「ずいぶん愛想がいいな」
ルパン「ちょうどよかった、刑務所生活にも飽きてきたところだったんです。ところで要件は?」
ガニマール「カオルン事件だ」
ルパン「ちょっとまってください、なんせいろんな事件に関わっているものですから。ええと・・・ああ、あった!ルーベンス、ワトー、それから小物が数点」
ガニマール「事件は君が指揮したのかね」
ルパン「そうですよ」
ガニマール「ここにいながら?そんなばかな」
ルパン「そこに郵便局の領収書があるはずです」
ガニマール「君は毎日身体検査をされているはずだ、そんなものどうやって持ち込んだんだ」
ルパン「そうですね、確かに上着の裏地をほどいたり、靴の底を調べたり、身体検査は綿密です。けれど、誰一人、アルセーヌ・ルパンがそんな簡単な隠し場所を選ぶほどバカじゃないってことに気づかない」
ガニマール「予告状も君か。」
ルパン「もちろん」
ガニマール「あんな手紙を出すのが君の気晴らしかね?」
ルパン「まさか!男爵に手紙を出さなくても盗めるのだったらあんなことはしません。あの手紙が全ての出発点なのですよ」
ガニマール「なんだと」
(イメージ映像カオルン邸)
ルパン「絶対に侵入できない家に、僕がこっそりと忍び込んだとでも?」
ガニマール「それは不可能だ!」
ルパン「そう、不可能です。だから方法はひとつしかない、城の持ち主に、僕を招待させるんです」
ガニマール「ふふ、なるほど、かなり独創的なやりかただ!」
ルパン「財産を奪うというような予告状が来たら、警部ならどうしますか?」
ガニマール「警察に連絡するね」
ルパン「警察に連絡しても相手にされなかったら?」
ガニマール「誰か信頼できる人に、援助を要請するだろう」
(イメージ映像電話をかけるカオルン)
ルパン「そう、そして、カオルン夫人は、自分の絵を守るために僕の仲間に援助を要請することになる」
ガニマール「ますます独創的だな」
(イメージ映像カオルン&ガニマール)
ルパン「そして僕の仲間の一人がカオルン夫人を見張っている間に、残りの仲間が窓から荷物を運び出す、簡単なことです」
ガニマール「実に見事だ、しかし、誰なんだ、カオルン夫人がそんなにも信頼を寄せてしまう人物とは?私には思いつかない」
ルパン「あなたですよ」
ガニマール「なに!?わしだって?」
ルパン「そうです、だからおもしろいことにね、警部。もし警部が、カオルン事件の捜査に関わることになったら、自分で自分を逮捕しなければいけなくなるんです!」
ガニマール「笑うとはなにごとだ」
ルパン「これは失礼、しかしご安心ください。警部がカオルン邸に行くことはありません。捜査はまもなく打ち切りになります。」
ガニマール「なぜ?」
ルパン「にせガニマールが、今僕と取引してる最中なんですよ。まとまった金額で、絵を買い戻すってね。無事に絵を買戻し、カオルン夫人は告訴を取り下げます」
ガニマール「なぜそんなことがわかる?」
ルパン「その、卵ですよ」
ガニマール「朝食の卵か」
ルパン「割ってみてください」
ガニマールが卵を割ると、手紙が出てくる。
ガニマール「あっ」
ルパン「ははは、隠し場所ってのはこうじゃなくちゃ。なになに・・・話しついた。10億。まあ結構いい金額になったか」
ガニマール「10億だと!?」
ルパン「なんせ僕の経費はパリ市全体の年間予算に匹敵しますからね」
ガニマール「ほう、しかし残念ながら君はもうすぐ裁判にかけられるのだ」
ルパン「警部、私がこんなところで朽ち果てるとでも思っているんですか?来週水曜、あなたのお宅にうかがいます、葉巻をふかしながら話でもしようじゃないですか」
ガニマール「そうかアルセーヌルパン・・・では待っているぞ」
ルパン「ガニマールさん!時計をお忘れです」
ガニマール「時計?」
ルパン「ええ、僕のポケットに迷い込んできました」
ガニマール「おい!いつの間に!」
ルパン「すみません、つい悪い癖が。お返しします。僕がいつも使ってる時計はこっちですよ」
ルパン時計を取り出す
ガニマール「それは誰のポケットから迷い込んできたんだね・」
ルパン「だれだろう?あ、そうだ、確か、看守のブービエだ。なかなかいい人ですよ。」
※前半を会話形式にするため、カオルン男爵の出番をカオルン夫人+召使の会話にアレンジしました。
ルパンシリーズ第二作。
カオルン男爵のもとにルパンから盗みの予告状が届く。そんなばかな!ルパンは獄中にいるはずだ!
それとも・・・まさかルパンはすでに脱獄してしまったのか!?
そんなはずはない、しかし・・・。
ガニマール警部が事件を追う!
読後の感想など
第一作で逮捕されたルパンの話。ルパンはあまり登場しないのですが、最後に登場してくれます。
そして、シャーロック・ホームズの名前がここですでに引き合いに出されています。
本人は登場しないのですが、今後の展開を予想させます。
入手できる書籍
第二作ですので、入手は容易。以下の書籍に収められています。
偕成社全集版 第1巻「怪盗紳士ルパン」
新潮文庫ルパン傑作集(IV)「強盗紳士」
創元推理文庫「怪盗紳士リュパン」
ハヤカワミステリ文庫「怪盗紳士ルパン」
ポプラ社版第1巻「怪盗紳士」
講談社青い鳥文庫「怪盗ルパン怪紳士」
岩波少年文庫「怪盗ルパン」
偕成社文庫「怪盗紳士ルパン」
早川書房ポケット・ミステリ「強盗紳士ルパン」
角川つばさ文庫「怪盗紳士アルセーヌ・ルパン」
ストーリー(抜粋)
#1 カオルン男爵邸
召使「マダム、お手紙です」
夫人「え?なにこれ、刑務所から?まあ、差出人名がないのね。・・・こ、これは・・・!!」
ルパン「貴殿のお持ちのルーベンスおよびワトーの絵画は、大変私の趣味にかなうものであります。つきましては、宝石類と絵画をおさめたガラスケースをそっくりそのまま頂戴したいと存じます。荷造りをして、ばてぃにょーる駅止めで発送してください。一週間以内にお送りいただけない場合、来る9月27日の深夜、私自ら盗りにうかがいましょう。アルセーヌ・ルパン」
召使「どうなさいました?」
夫人「ルパンから予告状が!」
召使「えっ!?あの有名な怪盗が?」
夫人「絵画のことはともかく、ガラスケースに一緒に宝石を隠していることは内の者以外誰も知らないはずよ!なぜルパンはそれをしっているのかしら?」
召使「警察にしらせましょうか?」
夫人「いいえ、・・・通報してもいたずらだと笑われるのがオチでしょう・・・。そうだ!ガニマール警部に連絡しましょう」
召使「警部に?」
夫人「そう、ガニマールはルパンを捕まえることに執念を燃やしている警察官よ。きっとこの予告状を見たら動いてくれる!彼と直接連絡をとる方法を調べて!」
召使「わかりました!」
#2 川べり
ガニマール「なるほど。しかし、これはルパンのものではないでしょう、きっとただのいたずらです」
夫人「そんな・・・あなたならきっと真剣に話をきいてくれると」
ガニマール「残念ですがカオルン夫人、ルパンはすでに牢屋にいるのです」
夫人「えっ!?」
ガニマール「先日、プロヴァンス号の船上で捕まえたのです」
夫人「本当ですか?確かに、本物のルパンを捕まえたのですか」
ガニマール「確かに本物です」
夫人「もし彼が、すでに脱獄していたら?」
ガニマール「サンテ刑務所からは誰も脱獄できんよ、たとえそれが、アルセーヌ・ルパンであっても。」
#3 カオルン男爵邸
夫人「ルパンじゃなかったみたい」
召使「そうなんですか。マダム、あのまた、電報が」
夫人「なにかしら!?」
ルパン「バティニョール駅に荷物なし。明日の夜は覚悟されたし。アルセーヌ・ルパン」
夫人、電話をかける
ガニマール「もしもし」
夫人「ガニマールさん、やっぱり・・・ルパンです!また、電報がきたんです、ルパンから!」
ガニマール「そんなばかな」
夫人「どうか、お願いです」
ガニマール「しかし、ルパンは刑務所にいるというのに、警察組織を動かすわけには・・・」
夫人「おいくら差し上げたらよろしいですか?」
ガニマール「なんだって?」
夫人「私はお金持ちです、あの大切な絵を守るためならなんでもします。警察が動けないなら、個人的に、人を雇って見張っていただけないでしょうか」
ガニマール「そういうわけには」
夫人「秘密はまもります。3000万円で足りるでしょうか」
ガニマール「そこまでおっしゃるなら見張りはつけましょう。でも何度も言いますが、ルパンは今刑務所にいるのです。人を雇うお金なんて、どぶに捨てるようなものですよ」
#4刑務所
ガニマール「君はルパンかね」
ルパン「そうですよ」
ガニマール「にせものじゃないだろうな」
ルパン「正真正銘、僕ですよ」
ガニマール「君がつかまったとき、正直わざとじゃないかと疑ったんだがね」
ルパン「おもてなしできなくて残念だなあ。冷たい飲み物ひとつないんだから!いや、本の仮住まいですよ。出て行きたくなったら出て行きます」
ガニマール「それにしては、ずいぶん長くいるじゃないか」
ルパン「ある、女性のことを忘れなければいけないんです・・・。美しい人だった。この恋の傷を癒さなければならないときに、俗世間の荒波は厳しすぎる・・・。隔離療法ってやつですよ!」
ガニマール「君は刑務所を何だと思ってるんだね!もういい、どうやら本物のようだからな」
#5 カオルン男爵邸夜
夫人「この屋敷には、二つの門があります。入り口はその二つだけです」
ガニマール「あの井戸へ通じる道は?」
夫人「地下道があったようですが、すでに埋め立てられています。」
ガニマール「肝心の絵はどこに?」
夫人「この隣の部屋です」
ガニマール「隣か。では私がこの部屋の扉を見張る。みんな、しっかりみはってくれたまえ、いいな!」
部下「はいっ!」
夫人「これで安心して眠れるわ」
#6 カオルン男爵邸朝
夫人「おはようございます、何もありませんでしたか?」
ガニマール「もちろん、誰一人来ていません。何も起こりませんでしたよ」
夫人、隣の部屋へ移動。
夫人「きゃあ!」
ガニマール「どうしました?」
夫人「絵が!絵がない!」
ガニマール「なに?そんなばかな!この部屋を見張っていた見張りは?」
召使「あの・・・寝ているようなんですが」
ガニマール「なに?おい!起きろ!!・・・だめだ、寝ているんじゃない。眠らされたんだ」
夫人「ルイ16世ゆかりの蜀台もない・・・マリアの聖母像も・・・(泣き出す)」
ガニマール「おのれ、ルパンめ!!」
夫人「私のコレクションの中でも粒よりのものばかりが・・・」
警察官がおきる
警察官「う、うーん」
ガニマール「おい!しっかりしたまえ!絵は盗まれてしまった!君は誰かを見なかったか?」
警察官「いえ、誰も見ませんでした」
ガニマール「じゃあ一体誰に眠らされたんだね?」
警察官「わかりません」
ガニマール「何か飲食したか?」
警察官「その、水差しのなかの水を少し」
ガニマール「そうか、その水を調べろ!それから屋敷にほかの入り口がないか、徹底的に調べるんだ!」
#7 刑務所
ルパン「やあ、これは警部、またまたお出ましいただけるとは」
ガニマール「ずいぶん愛想がいいな」
ルパン「ちょうどよかった、刑務所生活にも飽きてきたところだったんです。ところで要件は?」
ガニマール「カオルン事件だ」
ルパン「ちょっとまってください、なんせいろんな事件に関わっているものですから。ええと・・・ああ、あった!ルーベンス、ワトー、それから小物が数点」
ガニマール「事件は君が指揮したのかね」
ルパン「そうですよ」
ガニマール「ここにいながら?そんなばかな」
ルパン「そこに郵便局の領収書があるはずです」
ガニマール「君は毎日身体検査をされているはずだ、そんなものどうやって持ち込んだんだ」
ルパン「そうですね、確かに上着の裏地をほどいたり、靴の底を調べたり、身体検査は綿密です。けれど、誰一人、アルセーヌ・ルパンがそんな簡単な隠し場所を選ぶほどバカじゃないってことに気づかない」
ガニマール「予告状も君か。」
ルパン「もちろん」
ガニマール「あんな手紙を出すのが君の気晴らしかね?」
ルパン「まさか!男爵に手紙を出さなくても盗めるのだったらあんなことはしません。あの手紙が全ての出発点なのですよ」
ガニマール「なんだと」
(イメージ映像カオルン邸)
ルパン「絶対に侵入できない家に、僕がこっそりと忍び込んだとでも?」
ガニマール「それは不可能だ!」
ルパン「そう、不可能です。だから方法はひとつしかない、城の持ち主に、僕を招待させるんです」
ガニマール「ふふ、なるほど、かなり独創的なやりかただ!」
ルパン「財産を奪うというような予告状が来たら、警部ならどうしますか?」
ガニマール「警察に連絡するね」
ルパン「警察に連絡しても相手にされなかったら?」
ガニマール「誰か信頼できる人に、援助を要請するだろう」
(イメージ映像電話をかけるカオルン)
ルパン「そう、そして、カオルン夫人は、自分の絵を守るために僕の仲間に援助を要請することになる」
ガニマール「ますます独創的だな」
(イメージ映像カオルン&ガニマール)
ルパン「そして僕の仲間の一人がカオルン夫人を見張っている間に、残りの仲間が窓から荷物を運び出す、簡単なことです」
ガニマール「実に見事だ、しかし、誰なんだ、カオルン夫人がそんなにも信頼を寄せてしまう人物とは?私には思いつかない」
ルパン「あなたですよ」
ガニマール「なに!?わしだって?」
ルパン「そうです、だからおもしろいことにね、警部。もし警部が、カオルン事件の捜査に関わることになったら、自分で自分を逮捕しなければいけなくなるんです!」
ガニマール「笑うとはなにごとだ」
ルパン「これは失礼、しかしご安心ください。警部がカオルン邸に行くことはありません。捜査はまもなく打ち切りになります。」
ガニマール「なぜ?」
ルパン「にせガニマールが、今僕と取引してる最中なんですよ。まとまった金額で、絵を買い戻すってね。無事に絵を買戻し、カオルン夫人は告訴を取り下げます」
ガニマール「なぜそんなことがわかる?」
ルパン「その、卵ですよ」
ガニマール「朝食の卵か」
ルパン「割ってみてください」
ガニマールが卵を割ると、手紙が出てくる。
ガニマール「あっ」
ルパン「ははは、隠し場所ってのはこうじゃなくちゃ。なになに・・・話しついた。10億。まあ結構いい金額になったか」
ガニマール「10億だと!?」
ルパン「なんせ僕の経費はパリ市全体の年間予算に匹敵しますからね」
ガニマール「ほう、しかし残念ながら君はもうすぐ裁判にかけられるのだ」
ルパン「警部、私がこんなところで朽ち果てるとでも思っているんですか?来週水曜、あなたのお宅にうかがいます、葉巻をふかしながら話でもしようじゃないですか」
ガニマール「そうかアルセーヌルパン・・・では待っているぞ」
ルパン「ガニマールさん!時計をお忘れです」
ガニマール「時計?」
ルパン「ええ、僕のポケットに迷い込んできました」
ガニマール「おい!いつの間に!」
ルパン「すみません、つい悪い癖が。お返しします。僕がいつも使ってる時計はこっちですよ」
ルパン時計を取り出す
ガニマール「それは誰のポケットから迷い込んできたんだね・」
ルパン「だれだろう?あ、そうだ、確か、看守のブービエだ。なかなかいい人ですよ。」
※前半を会話形式にするため、カオルン男爵の出番をカオルン夫人+召使の会話にアレンジしました。
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