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2018/02/22

おそかりしシャーロックホームズ


概要
ドバンヌの屋敷には秘密の地下道に関する言い伝えがあった。ところが、その秘密の鍵を握っている年代記が、何者かによって盗まれてしまう。危機を感じ取ったドバンヌは、イギリスのシャーロックホームズに、事件解決の応援を要請するのだった・・・。

シャーロックホームズが、ルパンの小説に登場する。「遅かりし」という題名からわかるとおり、ホームズはルパンのライバルとして登場するものの、やられ役としての役割。

ホームズの登場は作者に無断で登場させたため、コナン・ドイルから抗議の文書が届いた。以後ルブランはシャーロック・ホームズ(Sherlock Holmes)の冒頭の"S"を後ろに移動させ(Herlock Sholmes)に改名した。しかし、日本語訳では「シャーロックホームズ」とするのが普通。

読後の感想など
もともとホームズファンだった私ですが、ホームズの登場については割り切って読みました(笑)。
この話ではまだソフトですが、ホームズはこのあとどんどんまぬけなキャラになっていきますので^^;
ホームズファンは、別人だと思って読んだ方が気持ちよく読めるかと思います。

みどころは、やはりネリーさんとのラブコメ(?)シーンです。
「明日4時にすべて元に戻します」は有名なせりふらしく、2004年の映画ルパン」でも引用されていました。

「紳士」な感じが伝わってきたり、「泥棒である自分」に悩むシーンなど。今までヒーローだった彼が、人間らしさを覗かせます。
ルパンは恋愛になると情熱的ですね(笑)。「冷静沈着な大泥棒」っていう触れ込みなのに、この大げさな求愛は・・・日本人が読むとキャラが急に崩壊してしまったようにも思えたのですが、^^;フランス人ですからね^^;グランデ・アモーレ!
愛が、だいじです^^;

入手できる書籍
ルパンシリーズ一冊目の「怪盗紳士ルパン」の最終話です。入手容易。各社の「怪盗紳士ルパン」には大体収録されています。ただし、少年少女向け文庫などでは収録話数を減らすためか、「怪盗紳士ルパン」収録作品を2冊に分けているところもあるので要注意。この作品を収録している書籍を一覧にしてみます。

偕成社全集版 第1巻「怪盗紳士ルパン」
新潮文庫ルパン傑作集(IV)「強盗紳士」
創元推理文庫「怪盗紳士リュパン」
ハヤカワミステリ文庫「怪盗紳士ルパン」
ポプラ社版第2巻「ルパンの大失敗」
講談社青い鳥文庫「怪盗ルパン真犯人を追え!」
岩波少年文庫「怪盗ルパン」
偕成社文庫「怪盗紳士ルパン」
角川つばさ文庫「怪盗紳士アルセーヌ・ルパン」
ストーリー(※思いっきりネタバレ注意!)

鳥羽(とば:原作名ドバンヌ 大金持ち)
鈴門(すずかど:原作名ベルモン 鳥羽の友人)
蟹間(かにま:原作名ガニマール 警察官)
音凛(ねりん:原作名ネリー 鳥羽の妹)
ルパン4世
シャーロックホームズ


● 2 船の上
蟹間「(観客に向って)君たち、旅行中に申し訳ないが・・・ルパンを見なかったかね。実はこの船にルパンが乗り込んでいるというんだ。有名な怪盗で、盗みをやりだしたら被害は計り知れないのだ。おっと、私は(警察手帳を取り出す)蟹間在。ルパンを絶対捕まえると公言している、あの有名な警官だよ。はっはっは」

そこにゲストが通りかかる
蟹間「ああ君、ルパンを見なかったかね」
ゲスト「ルパン?どんな人ですかね」
蟹間「どんな人かって・・・うーん、一概には言えない」
ゲスト「はあ???」
蟹間「(指名手配の画像を見せて)これがルパン(仮)!」
ゲスト「かっこかり?」
蟹間「そう、私は20回ほどルパンに会っているが、現れたのは毎回違う人間だった。これはあくまでやつの宣伝用の姿でしかない。変装と演技の達人でね。そのときどきで顔立ちもしぐさ、体つき、年齢、性別、性格までも違うのだ。」
ゲスト「それじゃあ探しようがありませんね」
ゲスト、立ち去り退場。
蟹間「今度こそ、ぜったいとっつかまえてやる!」
蟹間、退場。

● 3 ルパン4世
ルパン「どうして決まった外見をしていなくちゃいけないんだ?いつも同じ人物でいるなんて、まったく危険極まりない。手口を見るだけで私だとわかる。それでいいじゃないか」

● 4
ルパンがいる。そこに音凛がやってくる。音凛はばらを持っている。
ルパン、音凛に一目ぼれしてしまう。

音凛「ルパンが船に乗ってるってほんとですか」
ルパン「あ・・・いや・・・そういううわさですね」
音凛「ルパンがすぐそこにいるかもしれない、なんて怖いですね」
ルパン「いや、そのあなたの美しさに比べれば、ルパンの恐ろしさなど・・・」
音凛「(スルーして)はあ、こんなのがあと5日も続くなんて!」
ルパン「あなたが困っているならこの私が!ルパンを見つけ出して見せましょう!簡単ですよ」
音凛「ずいぶん自信があるんですねえ」
ルパン「なんのこれしき、美しい女性のためならたとえ火の中水の中。美しい二人の思い出にぜひそのばらをもらえませんか」
音凛「荷物少ないんですね(ルパンの鞄を持ち上げる)」
ルパン「あ~~~それは・・・まあいっか」
そこに蟹間がやってきた
蟹間「アルセーヌ・ルパンだな」
ルパン「違いますよ!安藤金也(あんどうかねなり:原作名ベルナール・アンドレジー)ですよ。ほら、身分証も」
蟹間「安藤金也は、三年前死んでいる」
ルパン「ええ、じゃあ僕しんでるってこと」
蟹間「どうやって、その身分証を手に入れたかは知らないが、つべこべいわないで観念しろ」
ルパンに手錠をはめる
音凛の前で手錠をはめられ、はずかしいルパン。
蟹間「(音凛の持っている鞄を見て)その鞄に証拠の品が入っているはずだ、こっちに渡しなさい」
ルパン「(ひとりごと)まっとうな生き方ができないっていうのもせつないねえ。こうやって美女と出会っても次に会えるのはいつのことか・・・」

音凛、ルパンと蟹間を見比べ
音凛「あっ、手が滑った!」
鞄を投げる。自分をかばった音凛に驚くルパン。
(海に荷物が沈む音)
音凛、ばらを残して、その場を立ち去る。
蟹間「あ、こら!」
ルパン「ちょうど船も着いたようだし、それじゃあさいなら、美しいあなた、また会えるひまで」
いつのまにか外していた手錠を蟹間に渡して、バラを拾い上げ走り去る。
蟹間「おい、こら!ルパン!まて~~~~~っ」


● 5 鳥羽の豪邸
鈴門:えっ、明日かの有名な探偵のシャーロックホームズが来る!?
鳥羽:そうなんですよ、鈴門さん。
鈴門:それまたいったいなんで?
鳥羽:実はこの鳥羽家の屋敷には言い伝えがあって。極秘の地下道があるらしいんです。ところが図面は紛失しており、どこに地下道があるのかがわかりません。祖父の代までは代々言い伝えられてきたのですが、その祖父は東京の空襲で急逝してしまったため、今は真実を知るものが誰もおりません。
鈴門:でもなぜ急に探偵を呼ぼうなんて考えたの?
音凛:ルパンから予告状が来たんですよ。だからおねえちゃん、躍起になって。
鈴門:音凛!ほんとあんたは口が軽い・・・まあそういうことなんですよ。この屋敷の財産をねこそぎいただくって。鳥羽家は明治時代に財産を築きました、財閥の解体でその影響力はいくぶん小さくなったものの・・・ルパンなんぞに財産を渡すわけにはいきません!ルパンはきっと地下道を見つけたんです。そこを通ってやってくるに違いありません。
鈴門:それは大変!地下道を早く見つけなければね。手がかりは全くないのですか。
鳥羽:調べたところでは、鳥羽一族の「財産記録」のなかに、先祖が手がかりを記したとありました。一応見てみたのですが、意味不明な言葉が並んでいるだけで。
音凛;斧は旋回す、震える空に。されど翼はひらき、人は神のもとへいく。暗号みたいですよね。
鳥羽:暗号なのか、旋回する斧とか、飛ぶ鳥ってなんなのか。全く謎なんです。
鈴門:ですね。
鳥羽:まあ、ホームズが来るまで少々おくつろぎください。鳥羽家自慢のアーティストのおつきですよ。謎解きは、演奏のあとで。


● 8 誰もいないやしき
ルパンが中に入ってくる。つぎつぎと、高価と思わしきものを持ち去る。
最後に宝石箱をとろうとしたとき、がたっと音がして、ルパンはカーテンの陰にかくれる。

音凛が入ってくる。
音凛「誰かいる、出てきなさいよ!」
おそるおそる部屋を見渡しているが、思い切って一気にカーテンを開ける。
ルパンと目が合う。
音凛「あなたは!」
ふたり、驚き、沈黙。
ルパン、持っていた宝の一つを取り落とす。
その音にふたりともはっとわれに返る。
ルパンが一歩歩み寄ると、音凛は一歩後ずさる。
音凛「誰か来る・・・早くにげて」
ルパン「明日の16時、かならずすべてもとにもどしておきます。どんなことがあろうと、約束はかならず守ります」
音凛「早く!」
音凛が足音のするほうに気をとられ、振り向くとすでにルパンはいない。

ルパンの独白「あのときあなたは、『もし本当にこの人がルパンだったら』そう思って海に鞄を投げ捨てたんだ。けれど今度は現行犯だ。君にとって僕は、今後どんなことがあろうともずっと泥棒なんだ。他人のポケットに手を入れ、こそこそと逃げ出す男なんだ」

● 屋敷
蟹間「え~つまり、ルパンから予告状が来たのが一昨日、そして夜の間に宝が根こそぎ盗まれた、窓は壊されていないしドアもこじあけられなかった、荷物はどこか秘密の出入り口から運び出されたにちがいない。そういうことですね」
鳥羽「そのとおりです、あ、友人の鈴門と妹の音凛も確認してます」
鈴門「そう、私も昨日までお宝がここにあったのを見ました」
蟹間「音凛さんはなにかきづいたことは」
音凛は時計を気にしている。
音凛「え?あ、ありません。」
ピンポーンとチャイムが鳴る
声「宅急便です」
音凛「16時だ」
ドアを開けると、誰もいない。すべてのお宝が、そこに積まれている。
鳥羽「戻ってきた!宝が全部!戻ってきた!よかった!よかった!」
宝を部屋に運び込む鳥羽。
音凛、ルパンを追いかけ外に飛び出す。

● 屋敷の外
音凛があたりを見渡している。ルパンを見つける。
ルパン「僕は約束を守りました」
音凛「・・・」
ルパン「あなたとお会いしたのは、プロヴァンス号のデッキでした。過去はなんと遠く感じられることでしょう。昨晩見た僕は、僕じゃない!あのころのことを思い出し、昨日見たことは忘れてくれませんか」
音凛「・・・」

ルパン「すみません、アルセーヌ・ルパンはこれからもアルセーヌ・ルパンでしかない。すみませんでした。僕がそばにいるだけで、あなたに対する侮辱になってしまうんですね」
音凛が通り過ぎる。ルパン、引き止めようとしてやめる。
音凛が見えなくまで見送っている。

ふと、音凛がいた場所に置かれているばらに気づく。

そこにホームズが通りかかる

ホームズ「すみません、鳥羽さんのお屋敷はこちらの道でよろしいでしょうか」
ルパン「まっすぐです。みなさんおまちかねですよ」

しばらくの沈黙。

ホームズ「では、のちほど」
お互いに相手の正体に気づきながら、にらみつけあって立ち去る。

● 鳥羽家
ホームズがチャイムを鳴らす。
鳥羽「はい」
ホームズ「にゃーろっくほーむずです」
鳥羽「にゃーろっく?」
ホームズ「線が一本足りないだけです。気にしたら負けです」
鳥羽「これはこれは!ようやくおいでくださいましたか!実は盗みは昨晩すでにおきてしまいまして」
ホームズ「知っています。私がくるなどといわなければよかったのに」
鳥羽「なぜそれを知って・・・ああ、さすがは名探偵!しかし宝は戻ってきたのです」
ホームズ「え?」
鳥羽「さっき、16時に宅急便で帰ってきたのです。まったく謎だらけです、ルパンはどうやって侵入し、どうやって出て行き、なぜこの宝を返したのか」
ホームズ「あなたが暗号の話をしたのは妹さんだけですか」
鳥羽「はい。あ、あと昨日友人の鈴門さんとお話をしましたよ。鈴門さんも、警察の捜査につきあわせてしまって」
ホームズ「なるほど、あなたが自ら、ルパンに秘密の地下道のありかを解き明かす鍵を教えてしまったのですね」
鳥羽「私がルパンに謎を?・・・」
ホームズ「そうですとも、ルパンと、鈴門さんは同一人物ですから」
鳥羽「え?・・・あっ!!!私はなんてことを。あの悪党め!」
ホームズ「あの暗号こそ、ルパンがずっと捜し求めていたものだったんです。それをあなたが教えたため、その夜に、ルパンは謎を解き、この屋敷を襲った。」
ホームズ、床を調べて
ホームズ「ルパンは装飾品をこの椅子に並べていた形跡がありますね。それが、ルパンが盗品を返した謎を解く鍵でしょう。けれど今はそれどころではありません。大事なのは地下道です」
鳥羽「あなたの地下道の予想は?」
ホームズ「予想なんかじゃない、わかっているんです。屋敷から数百メートル以内に礼拝堂がありませんか。キリスト教の」
鳥羽「あります。今は廃墟となっているようですが」
ホームズ「なるほど、かんたんなことですよ。」
鳥羽「というと?」
ホームズ「はしご的なものありますか」
鳥羽「これでどうですか」
ホームズ「その、ティベルメニルと書かれているところに」
鳥羽「(台を置いて)これでいいですか」
ホームズ「はい、のぼってください」
鳥羽、台の上に登る。
ホームズ「Hの文字を触ってみてください。どちらかの方向に回転しませんか」
鳥羽「はい・・・あ、回りました!」
ホームズ「そこからRの文字、はいそれです、こう、まわしてみてください」
鳥羽「え?あ、こうですね!」
ホームズ「あとはちょっと台を動かして、Lの文字のところへ」
鳥羽「はい」
ホームズ「私の予想通りであれば、Lの文字が小窓のように拓くはずです」
鳥羽「え、あ、はい」
窓が開き、鳥羽がびっくりして転ぶ。
鳥羽「なるほど、ここが地下道の入り口だったんだ」
ホームズ「お怪我はありませんか」
鳥羽「すみません、びっくりしてしまって」
ホームズ「いえ、ご先祖さまの書き残したとおりですよ」
鳥羽「どうして?」
ホームズ「アッシュはフランス語でHのことですが斧という意味もあります。斧は回転する、でしたよね。エールはRですが、空という意味です。だから空は震える、でした。そしてLは開くとありましたから」
鳥羽「なるほど」
ホームズ「地下道を、進んでいきましょう。礼拝堂に出るはずです。神のみもとへ来る、ですから」

● 礼拝堂
鳥羽「礼拝堂に出ましたね。すばらしいです、ホームズさん!私も蟹間警部も、同じだけの手がかりを持っていながら」
ホームズ「君たちはただみているだけで観察していないんだにゃ。ただ見るのと観察するのとでは大違いなんだにゃ」
鳥羽「え、やっぱりにゃっていった?」
そこに、蟹間警部がやってくる。
鳥羽「蟹間さん!」
蟹間「さっき、鈴門さんと会ってね。君たちがここに来るはずだって言うもんだから」
鳥羽とホームズ、顔を見合わせる。
鳥羽「ルパンは、あなたには謎解きは朝飯前ってわかっていたんですね。それで蟹間さんを迎えによこしたんだ」
ホームズ「てごわいやつです、一目見てわかりました」
蟹間「え、ルパンに会ったんですか!」
ホームズ「ええ」
蟹間「なぜつかまえなかったんですか!!!」
ホームズ「私は刑事じゃないですから。」
蟹間「ああ、そっか・・・くそ、ルパンのやつめ!絶対つかまえてやる!何歳になったって、絶対諦めないからな!」


蟹間「あ、そうそう鈴門さんがこれを、ホームズさんにって」
小包を渡す
ホームズ「警部、鈴門さんがルパンですよ」
蟹間「え!なんだって!そういうことか、くそ~絶好の機会をまた逃してしまったか」
ホームズ、小包を開ける
ホームズ「親愛なるシャーロックホームズ様、アルセーヌルパンより・・・ってこれ私の時計!!いつのまに!あ、すれちがったときにやられたか・・・」
鳥羽「これは貴重ですよ!ルパンが盗んだホームズの時計!やつもなかなかのものですね!」
ホームズ「そう、てごわいやつです。アルセーヌ・ルパンとこのシャーロックホームズは、いつかまた再会するでしょう。世界は狭いですから。そのときには・・・」


※ストーリーは、わかりやすいよう一部簡略化しました。日本人名にしたのは、私が外国人の名前だと全然覚えられなくて、何度も読み返してしまうからです。また、1話読んだだけで全容がつかめるよう、登場人物の自己紹介シーンなどを追記しております。



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