FC2ブログ
2018/09/30

【アルセーヌ・ルパン:八点鐘】塔のてっぺんで

あらすじ

オルタンスとロッシーニは秘密の恋仲。
ある日ロッシーニは、オルタンスを屋敷から連れ出し、駆け落ちしようと画策し、車を用意する。

ところが、車で屋敷を抜けたところで、何者かによって車輪が撃たれ、車は立ち往生することに。
ロッシーニの不手際に失望したオルタンスは、車輪を撃った本人である、レニーヌ侯爵のほうに惹かれ始める。

オルタンスは冒険を求めていた。夫が精神病で、行く先の見えない結婚生活に疲れ果てていたのだ。
レニーヌ侯爵は、そんなオルタンスを立ち入り禁止になっている屋敷の探索に誘う。

その屋敷では不思議なことが連続で起こるのだった。
まず、ずっとねじを巻かれていないはずの時計が8回鳴る。
ドアは厳重にカギがかかっていて、この20年間だれも屋敷にはいった形跡がないにも関わらず。

さらに望遠鏡がかくしてあったため何を見るための望遠鏡なのかを探るため、二人は見晴らし台に上り、
そこで恐ろしい光景を目にする。

かつてのぞき窓があったと推測される位置から、望遠鏡をのぞくと、ずいぶん前から放置されている男女の死体、骸骨が目に入ったのだ!
骸骨が誰のもので、殺人者はだれか、そしてねじが巻かれていない鐘が鳴るわけは?
ルパンはオルタンスとともに、謎の解明に挑む!


読後の感想
レニーヌ侯爵(ルパン)とオルタンスの恋愛劇と謎の解明が同時に楽しめる、第一話。
オルタンスへのルパンの口説き文句がたまりません。
要約すると、「一緒に冒険にでかけよう。8つの冒険を終えたら、付き合ってほしい。でも途中で僕といるのが退屈だと思ったらいつでも見捨ててくれてかまわない」というもの。
オルタンスを落とすために(?)ルパンが行う8つの冒険が、この本に収録されていて、オルタンスとルパンの恋愛の行方も見ものな、連作短編集になっています。
さらに、もう一つルパンはオルタンスと重要な約束をしています。
それは、「最後の冒険で、行方が分からなくなった大事な留め金を取り戻す」ということ。


それにしてもフランスは自由恋愛なんですね。
一応、オルタンス結婚しているんですが。
ルパンとロッシーニと二人に口説かれています。
100年前でこんな感じ。さすが愛の国フランスという感じです。

ルパンが塔で見つけた骸骨の謎を解決し犯人を突き止めたことによって、オルタンスは、お金がなく旦那も入院という窮屈な結婚生活から救い出されることになります。
弱者を助ける(まあ今回は下心があるわけですが)ルパンの姿勢も健在。

ちなみに、ルパンはこの本を通して、盗みを行いません。
かなり「いい人」です。
ルパンの場合、盗みの才能を活かして社会を変えていくみたいなところもあって、
ただのいいひとでないのも魅力なのですけど。

ただ第一話の調子に乗った才能のある若者という感じから、殺人を経験したり、恋人を殺されたり、自殺未遂までしたりして、
ルパンもだいぶ大人になっていますから、何か心境の変化があった時期なのかもしれません。
スポンサーサイト
2018/09/28

カリオストロ伯爵夫人(アルセーヌ・ルパン)

あらすじ

20歳の頃のルパンの話。
ルパンは、自分の本名がアルセーヌルパンであるということを恥じて、ラウール•ダンドレジーと名乗っている。
日本人には理解しがたい感覚だけれど、ダンドレジーは、爵位を表す「ド」とアンドレジーがくっついて出来たもので、名前にこの「ド」がつくかどうかで、結婚できる相手も変わる、というものらしい。
さて、ラウール・ダンドレジーを名乗るルパンは例のごとく、恋に落ちている。相手はデティーグ男爵の娘で、クラリスという。
二人は男爵に秘密で、逢引を重ね、この日も、夜中にクラリスの屋敷で密会していた。

ところが屋敷でラウールは、クラリスの父とそのいとこ、さらにボーマニャンと呼ばれる人物が、一人の女性を裁判にかけているのを見てしまう。
裁判といっても、もちろん正式なものではなく、彼らはその女性を暗殺しようとたくらんでいるのだとラウールは気づく。

裁判の様子を盗み見ながら、ラウールは状況を理解していく。
女性はカリオストロ伯爵夫人と呼ばれる人物で、なんと、1816年から1892年まで、全く容姿が変わらず若いままなのだという。
また、クラリスの父ほか3人が隠し持っている秘密を、この女性も知っている。
また、クラリスの父の仲間二人をこのカリオストロ伯爵夫人が殺害したと彼らは主張している。

殺害が行われる夜、ラウールは彼女を助けるために、彼らに忍び寄る…。


感想

アルセーヌ・ルパンが大泥棒になった経緯を描く、ルパン初めの冒険譚。
カリオストロ伯爵夫人と行動を共にするうちに、泥棒組織の作り方を学び、あっという間に師匠をしのぐ実力をつけていく。

フランス映画の「ルパン」はこの作品を原作としているけれども、裁判が登場したり、登場人物の人物名が同じだけで、ストーリーは全く異なります。
映画では大熊座のトリックが登場していましたが、映画の結末で重要だった義眼のトリックは「水晶の栓」からアイデアを得たもの。

また、「ルパン三世カリオストロの城」の原作ともいいがたい。
ガニマール(銭形のモデル)出てこないし。
そもそもガニマールがルパンを追っかけまわしているってイメージを持っているのは日本人だけ、ルパン三世の影響なんですね。
ガニマールとルパンの対決がメインになっている話は最初の「怪盗紳士ルパン」「ルパンの冒険」あたりだけだったりします。

この作品は、カリオストロ伯爵夫人と、クラリス、ルパンの三角関係や、ボーマニャンのカリオストロ伯爵夫人に対する異常な恋愛感情など、昼ドラもびっくりのドロドロの内容…。

といっても、決して陰惨な描き方をされているわけではなくて、作風が軽快でテンポがよいのはいつもの通り。
恋愛劇に始まり、その後謎かけがあり、木箱のありかがわかってからはトリックもわかりやすく、どんでん返しもあり、あっという間に読んでしまう。

View this post on Instagram

@gwrgantがシェアした投稿 -


クラリスを愛していたはずが、伯爵夫人に心を奪われ、愛し合いながら憎みあうようになる。
そういう相性の人っていますよね。
似た者同士であるうえに、主義主張の根本的な部分が合わないと、なんか張り合ってしまうというか。

そしてこの時点ではまっとうな道を歩むことを希望していたルパン。
ルパンが天賦の才能と運命のいたずらで運命の泥棒の道をあゆむことになるまでのいきさつが描かれています。

作者のルブランは、もともと純文学を志していたのに、犯罪小説・推理小説で売れたことに少し戸惑っていたと言われています。
ときどきルパンに垣間見える葛藤、まっとうな道に戻りたいという気持ち、それなのに自分の才能は別のところにあるという苦しみ。
ルブラン自身が自分の葛藤と重ね合わせていたのかもしれません。
2018/09/20

水晶の栓(アルセーヌ・ルパン)

概要(あらすじ)
ルパンは、部下のボーシュレーとジルベールからの情報をもとに、ドーブレックの館に押し入ったルパンは、部下のボーシュレーが下男のレオナールを殺害してしまったことを知る。
警察がやってきて逃げ遅れた3人。
ルパンは部下を残して自分がまず逃げ、あとから2人を獄中から救い出すという決心をする。

こうして部下を救い出すために動き出したルパンは、2人がドーブレックの館に押し入ったのは実は金品目当てではなく、
なんの変哲もない水晶の栓のためだったことに気づく。
なぜ2人は、こんな水晶の栓にこだわったのか・・・?

調査に乗り出すルパンだが、なんとルパンが持っていた水晶の栓は、何者かによってまんまと盗まれてしまった! 

読後の感想など(ネタバレ)
ヒロインの名がクラリス。ドーブレックという悪者に、息子の命と引き換えに体の関係を迫られているという設定。
ルパン三世のクラリスのモデルでもあると考えられます。

有名な義眼のトリックが出てくるのは、この「水晶の栓」です。

さて、この話でルパンは殺人を犯します。

相手は自分の元部下。
彼は、道を誤って断頭台で処刑されることになった。
死刑が確定していた相手ではあるのですが、その元部下を、処刑直前に撃ち殺します。

ルパンが罪に問われない理由がよくわからないのですが、物語上スルーされています。
法的には、処刑執行ができなくなっているので、最低限業務執行妨害でしょうし、「どうせ死ぬ相手だから殺してもよい」とはならないと思うのですが、物語上それ以上語られていない以上、読者各自想像するしかないですね。

ともかく、処刑の直前にルパンに撃たれた元部下は、死ぬ直前に、こうつぶやきます。
「ありがとう親分、これで断頭台で首をちょん切られずに済む、ありがとう、親分!さすがに、大した男だぜ!」

このセリフには迫力がありますね。
犯罪者の世界ってそうなのかな、つかまって処刑されるくらいなら、親分に殺された方がましなのかな。
ちょっと違うけど、日本の武士の切腹を思わせるシーンでした。



入手できる書籍
翻訳が意外と少ない。そのうち入手困難になってしまうかも。
私も絶版の危機を感じて、動画制作をやろうと思って…なかなか進んでおりません。

ハヤカワミステリ文庫の翻訳が進まない気持ち、わかるなあ…。
出版社だって、文庫は言ってみれば出版社の自費出版ですからね。ルパンは今更お金になるわけでもないし、
ついつい後回しになってしまうのでしょう。

ただ出版社の場合、マンパワーに問題はないので、何かルパン関係の映画やアニメに話題があれば、一気に進むのかもしれませんね。

でも…私もがんばりますので、ハヤカワミステリ文庫にもぜひがんばってもらいたいところです。読みやすかったので。
※が全訳。

※偕成社全集版 第7巻「水晶の栓
※新潮文庫 ルパン傑作集(VI)「水晶栓」
※創元推理文庫「水晶の栓
※ハヤカワミステリ文庫「水晶の栓」
ポプラ社版 第7巻「古塔の地下牢」
ポプラ文庫クラシック「怪盗ルパン全集」「古塔の地下牢」
2018/09/20

人生の意味は、冒険することにしかありません。

ものごとを注意深く観察し、探ろうとする心があれば、人生は変わります。冒険はどこにでもあるのです、ひどく貧しい家庭の中にも、思慮と分別で凝り固まった人の顔の下にも。
したいと思えばいたるところに、感動したり、人のためになるよいことをしたり、しいたげられたものを救ったり、悪を食い止めたりする糸口が転がっているんですよ。
(中略)
人生の意味は、冒険することにしかありません。

―八点鐘