2018/03/01

黒真珠

概要(あらすじ)
多くの書籍で「怪盗紳士ルパン」の最後から二作目に収録されている作品。
ザルティ伯爵夫人の自宅に、黒真珠を盗みに入ったアルセーヌルパン。ところが夫人はすでに殺害されており、黒真珠もなくなっていた!
しかし事情をしらない警察は、無実の(?)ルパンに殺人の容疑をかけたり、見当はずれな人物を逮捕したりして右往左往。真犯人は誰なのか?そこでルパンは・・・。

読後の感想など
ルパン登場の際に、誰がルパンなのか予想がつきやすい作品。ルパンの出番を待っている読者にとってはうれしいです。作品も短く、読みやすいです。

入手できる書籍
基本的には「怪盗紳士ルパン」の収録作品ですが、いくつかの児童書などでは別になっているので注意が必要です。
偕成社全集版 第1巻「怪盗紳士ルパン」
新潮文庫ルパン傑作集(IV)「強盗紳士」
ハヤカワミステリ文庫「怪盗紳士ルパン」
ポプラ社版第2巻「ルパンの大失敗」
講談社青い鳥文庫「怪盗ルパン真犯人を追え!」
岩波少年文庫「怪盗ルパン」
偕成社文庫「怪盗紳士ルパン」
角川つばさ文庫「怪盗紳士アルセーヌ・ルパン」

ストーリー
※短くするため一部改変しております。
◆◆登場人物◆◆
料理人
召使ダネーグル
刑事
ガニマール判事
ルパン

#1伯爵夫人の部屋
伯爵夫人(実際は、キャストの一人にかつらをかぶせ、伯爵夫人だったことにする)が寝ているところにルパンが押し入る。
暗がりの中を進むルパン。
ルパン「黒真珠・・・いっただき」

左手がじゅうたんに落ちている燭台に触れる
ルパン、首をかしげる。
すぐそばには置時計も落ちている。
はらばいになって進むルパン。

ルパン「あっ」

ルパンの手に血痕がべったりついている。
ルパンは懐中電灯を取り出してあたりを照らす。
伯爵夫人の死体を見つけ

ルパン「死んでる・・・」

あたりを見回す。

ルパン「はっ・・・黒真珠は?」

黒真珠がはいっているはずの宝石箱を見つけ、開くが中が空っぽ。

ルパン「くそ」

あたりを見渡し、しらべものをする。壁の状態、ドアの状態など。

ルパン「なるほど、そういうことか」

#2
料理人、刑事、判事が話し合っている。

判事「死亡推定時刻は、夜の11時20分。この止まった置時計の時間とも一致します」
ガニマール「なるほど、ザルティ伯爵夫人は、夜中のうちに殺され、黒真珠が奪われた」
料理人「はい」
ガニマール「ザルティ伯爵夫人は財産家で有名でしたからね。それにしても、伝説の黒真珠までお持ちだったとは」
料理人「はい、そうなんです。婦人は『これだけは絶対に誰にも渡さない』とおっしゃって、いつも身に着けていらっしゃいましたわ。そして、夜になると、自室に黒真珠をしまって、おやすみになる習慣でした」
判事「彼女の贅沢振りはパリ中の話題に上ってましたからね」
ガニマール「お2人は、伯爵夫人につかえるため、この屋敷で・・・いつから一緒に暮らしていたんですか」
料理人「1年ほど前です」
ガニマール「なるほど」

ガニマールと判事、部屋を歩き回っているが、死体のあった場所に落ちたボタンを見つける
ガニマール「このボタンは」

料理人、はっとして
料理人「ダネーグルの上着のボタンですわ、どうしてこんなところに」
ガニマール「ダネーグル?」
料理人「はい、新しくきた召使です。今日は13時に出勤予定ですが」
ガニマール「ダネーグルの部屋を調べさせてもらおう」

判事、上着をもってやってくる
判事「警部!ダネーグルの上着に、血痕が」
警部「なるほど、ダネーグルが夜中のうちに押し入ったか。誰かが侵入した形跡は?」
料理人「いえ、ありません・・・。第一、私が起きた朝8時には、玄関にも勝手口にも、厳重にドアが開いていたんです」
警部「そんな!」
判事「密室殺人・・・ですか」
警部「ダネーグルをつかまえろ、凶器や合鍵を持っているにちがいない」

#3取調室
ダネーグル「だから言ってんだろ、俺がやったってんなら、証拠を見せろよ、凶器も、合鍵も見つかっていないのに、疑われても困るね」
警部「しかし血痕のついた上着が・・・」
ダネーグル「そんなの、真犯人が俺に濡れ衣を着せるためにやったのさ」
警部「アパートの管理人が午前3時ごろ、建物の中に入る人物を見かけたと証言している」
ダネーグル「俺じゃねえし。第一時計の針なんて、好きに動かそうと思えば動かせるだろう」

判事がやってきて、警部が立ち上がり、2人で話し合う。
判事「警部、彼は犯人ではないかもしれません」
警部「なに?アル中、傷害事件2回の前科、あいつ意外に誰がいるんだ」
判事「もうひとつ新しい情報があります。伯爵夫人の妹の証言です。伯爵夫人は、黒真珠のありかを、遺産相続人である妹に手紙で伝えたのだそうです。ところがその手紙が、何者かに盗まれた様子で・・・。」
警部「なに!盗まれた・・・まさかルパンがからんでいるのか」
判事「警部はなにかにつけてルパンの影を見つけるんですね」
警部「どこにでもルパンの影を見る・・・それは、やつがどこにでもいるからだ!やつのことはこのガニマールがしとめる!」
判事「なんにせよ、ダネーグルを逮捕するには証拠不十分ですね」
警部「くそ・・・」

釈放され、ダネーグルが取調室から出て行く。
判事「なぞは深いですね。合鍵も凶器も見つかっていない。犯行時刻は23:20ですが、犯人と、管理人が見かけたという、午前3時に訪れた人物は同一人物なのか・・・合鍵がないとすると、犯人はどうやって建物に押し入り、どうやって出たのか」


#4 居酒屋
釈放されたダネーグルが変装して酒を飲んでいる。男が話しかける

ルパン「乾杯といこうじゃないか」
ダネーグル「あん?じゃあ、乾杯」
ルパン「乾杯、ダネーグル」
ダネーグルが飛び上がる
ダネーグル「俺は、ダネーグルじゃねえ、アナトールってんだ」
ルパン「今はそう名乗っているようだがね」

名刺を取り出して渡す
ダネーグル「警察のだんなですかい。」
ルパン「前はね。でも今はもっと儲かる仕事をしてるんだ。君が協力してくれれば」
ダネーグル「なぜ俺が協力しなきゃいけない?」
ルパン「するに決まってるさ、拒絶なんかできっこない」
ダネーグル「どういうことだ」
ルパン「手っ取り早く説明するとね、お前が盗んだ黒真珠を渡してほしいんだ」
ダネーグル「そんなもの持ってない、俺が犯人だとでもいうのか」
ルパン「お前が犯人だ」
ダネーグル「残念ながら警察の見解は違っててね、だんな、さっき釈放になったばかりなんだ」
ルパン「事件の3週間前、鍵をこっそりくすねて合鍵を作ったろ」
ダネーグル「合鍵はあいにく見つかっていなくてね、証拠不十分で・・・」
ルパン「ここにあるさ」

合鍵を見せる。しばらくの沈黙。
ルパン「そして、ナイフを買ったのも合鍵を作ったのと同じ日だ。刃が三角形で溝がついている」

ナイフを見せる。
ダネーグル「はは、ナイフと合鍵があるからってなぜそれが俺のものだっていうんだ」
ルパン「部屋のクローゼットの中にお前の指紋がついている。お前はクローゼットに隠れていたとき、血で汚れていた手で壁を触ってしまった。刑事も判事も気づかなかったが、私は見つけた」

ダネーグルがうなだれる
ダネーグル「真珠を返したらいくらくれる」
ルパン「金はやれん。ナイフ、合鍵、指紋。協力しないならこれをお上に提供してやる。どうだ」

ダネーグルが両手で頭を抱えている。
ダネーグル「なぜお前、それを知って」

#5 ルパンの回想 部屋

ルパンが死体の前で考え事をしている

ルパン「俺は、死体を見つけてすぐ犯行の経過を推理した。犯人はダネーグルにちがいないと確信した。そして、ダネーグルが盗んだ黒真珠を手に入れるために何をしなけければいけないかを考えた。」

ルパンがナイフを拾い、鍵を手に入れ、ドアに鍵をかけ、ボタンを落とすしぐさをしながら
ルパンアナウンス「ダネーグルの有罪を決定付ける証拠をまずは、隠滅した。凶器のナイフを拾い、鍵穴に刺しっ放しになっていた合鍵を抜き取った。ドアにも鍵をかけた。しかし、犯人をいったん逮捕してもらわなきゃ困る。そこで、上着のボタンを現場におとしておいた。逮捕と釈放、このふたつをセットにしなければ黒真珠は手に入らないという天才的なひらめきが訪れたんだ」

#6 居酒屋

ルパンが追い詰める。
ルパン「さあ、黒真珠を渡せ。一時間以内だ」
ダネーグル「お前は何者だ」
ルパン「アルセーヌ、ルパン」

ダネーグル、飲み干そうとしていたワインを噴出す。
ダネーグル「なるほどな(苦笑い)・・・ついてこい」

#7川べり
舞台の上に、大き目の石が13個並んでいる。
ダネーグルとルパンが並んで歩いてくる。

ダネーグル「ここだよ」
ルパン「ここってどこだ」
ダネーグル「目の前だよ」
ルパン「何処だ」
ダネーグル「石の間だ」
ルパン「どの」
ダネーグル「自分で探せよ」
ルパン「じらそうってのか」
ダネーグル「そうじゃないさ、でも俺だって野垂れ死にたくはねえ」
ルパン「なるほど、いくらいるんだ?」
ダネーグル「アメリカ行きの三等船室代くらいは・・・それから当面の生活費に100フラン」
ルパン「よし、気前よくいこうじゃないか。100じゃなくて200やるからさっさと言え」
ダネーグル「12番目と13番目の石の間だ」
ルパン「よくもこんな人通りの多いところに・・・深さは?」
ダネーグル「10センチほどかな」
ルパンが石をどけると、黒真珠が現れる。
ルパン「ほら、約束の200フランと切符代だ」
2人、分かれる。

#8 ルパンの自室
ニュースの声「アルセーヌ・ルパンが、かの有名な黒真珠をザルティ伯爵夫人殺害犯から取り返したとの声明を出しました。警察は、伯爵夫人殺害犯とルパンは同一人物ではないと見て捜査を進めています」

ルパン「(黒真珠を眺めながら)次にこの宝を持つことになるのは、ロシアの貴族か、はたまた欲深いインドの王様か。この美しくて贅沢な一品は、いったい次は誰の首を飾るのだろう」

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2018/02/25

ルパンの脱獄

概要(あらすじ)
ルパンシリーズ第三作。
警察は、ルパンが脱獄を企てているという、確かな証拠を押収する。
しかし、当のルパンは、以外にもおとなしく独房に収まっているのだ。
もしやルパンはすでに脱獄してしまったのか・・・?真相は・・・?

心理的な意表をつく展開に!

読後の感想など
タイトルのとおり、ルパンの脱出劇です。

ルブランは心理小説を書いていたというだけあって、いわれてみれば当たり前の事実に読者が気づかない。
心理戦が見ものの作品です。

第一作「ルパンの逮捕」はルパンのキャラクターというよりはミステリーそのもの重視だったのですが、この作品はルパンのキャラクター描写にも重点が置かれています。
警察官のガニマールの言動をものともしない、ルパンの自信家な性格とその才能が明らかになっていきます。

今読者の前にいる登場人物は、ルパンなのかそうでないのか・・・が主題になる、
初期ルパンらしい作品でもあります。

入手できる書籍
各社から刊行のルパンシリーズ第一巻「怪盗紳士ルパン」に収録されています。
偕成社全集版 第1巻「怪盗紳士ルパン」
新潮文庫ルパン傑作集(IV)「強盗紳士」
創元推理文庫「怪盗紳士リュパン」
ハヤカワミステリ文庫「怪盗紳士ルパン」
ポプラ社版第1巻「怪盗紳士
講談社青い鳥文庫「怪盗ルパン怪紳士」
岩波少年文庫「怪盗ルパン」
偕成社文庫「怪盗紳士ルパン」
早川書房ポケット・ミステリ「強盗紳士ルパン」
角川つばさ文庫「怪盗紳士アルセーヌ・ルパン」
2018/02/24

獄中のアルセーヌ・ルパン

概要(あらすじ)
ルパンシリーズ第二作。
カオルン男爵のもとにルパンから盗みの予告状が届く。そんなばかな!ルパンは獄中にいるはずだ!

それとも・・・まさかルパンはすでに脱獄してしまったのか!?
そんなはずはない、しかし・・・。
ガニマール警部が事件を追う!

読後の感想など
第一作で逮捕されたルパンの話。ルパンはあまり登場しないのですが、最後に登場してくれます。
そして、シャーロック・ホームズの名前がここですでに引き合いに出されています。
本人は登場しないのですが、今後の展開を予想させます。

入手できる書籍
第二作ですので、入手は容易。以下の書籍に収められています。
偕成社全集版 第1巻「怪盗紳士ルパン」
新潮文庫ルパン傑作集(IV)「強盗紳士」
創元推理文庫「怪盗紳士リュパン」
ハヤカワミステリ文庫「怪盗紳士ルパン」
ポプラ社版第1巻「怪盗紳士
講談社青い鳥文庫「怪盗ルパン怪紳士」
岩波少年文庫「怪盗ルパン」
偕成社文庫「怪盗紳士ルパン」
早川書房ポケット・ミステリ「強盗紳士ルパン」
角川つばさ文庫「怪盗紳士アルセーヌ・ルパン」

ストーリー(抜粋)
#1 カオルン男爵邸
召使「マダム、お手紙です」
夫人「え?なにこれ、刑務所から?まあ、差出人名がないのね。・・・こ、これは・・・!!」
ルパン「貴殿のお持ちのルーベンスおよびワトーの絵画は、大変私の趣味にかなうものであります。つきましては、宝石類と絵画をおさめたガラスケースをそっくりそのまま頂戴したいと存じます。荷造りをして、ばてぃにょーる駅止めで発送してください。一週間以内にお送りいただけない場合、来る9月27日の深夜、私自ら盗りにうかがいましょう。アルセーヌ・ルパン」

召使「どうなさいました?」
夫人「ルパンから予告状が!」
召使「えっ!?あの有名な怪盗が?」
夫人「絵画のことはともかく、ガラスケースに一緒に宝石を隠していることは内の者以外誰も知らないはずよ!なぜルパンはそれをしっているのかしら?」
召使「警察にしらせましょうか?」
夫人「いいえ、・・・通報してもいたずらだと笑われるのがオチでしょう・・・。そうだ!ガニマール警部に連絡しましょう」
召使「警部に?」
夫人「そう、ガニマールはルパンを捕まえることに執念を燃やしている警察官よ。きっとこの予告状を見たら動いてくれる!彼と直接連絡をとる方法を調べて!」
召使「わかりました!」

#2 川べり
ガニマール「なるほど。しかし、これはルパンのものではないでしょう、きっとただのいたずらです」
夫人「そんな・・・あなたならきっと真剣に話をきいてくれると」
ガニマール「残念ですがカオルン夫人、ルパンはすでに牢屋にいるのです」
夫人「えっ!?」
ガニマール「先日、プロヴァンス号の船上で捕まえたのです」
夫人「本当ですか?確かに、本物のルパンを捕まえたのですか」
ガニマール「確かに本物です」
夫人「もし彼が、すでに脱獄していたら?」
ガニマール「サンテ刑務所からは誰も脱獄できんよ、たとえそれが、アルセーヌ・ルパンであっても。」

#3 カオルン男爵邸
夫人「ルパンじゃなかったみたい」
召使「そうなんですか。マダム、あのまた、電報が」
夫人「なにかしら!?」
ルパン「バティニョール駅に荷物なし。明日の夜は覚悟されたし。アルセーヌ・ルパン」
夫人、電話をかける
ガニマール「もしもし」
夫人「ガニマールさん、やっぱり・・・ルパンです!また、電報がきたんです、ルパンから!」
ガニマール「そんなばかな」
夫人「どうか、お願いです」
ガニマール「しかし、ルパンは刑務所にいるというのに、警察組織を動かすわけには・・・」
夫人「おいくら差し上げたらよろしいですか?」
ガニマール「なんだって?」
夫人「私はお金持ちです、あの大切な絵を守るためならなんでもします。警察が動けないなら、個人的に、人を雇って見張っていただけないでしょうか」
ガニマール「そういうわけには」
夫人「秘密はまもります。3000万円で足りるでしょうか」
ガニマール「そこまでおっしゃるなら見張りはつけましょう。でも何度も言いますが、ルパンは今刑務所にいるのです。人を雇うお金なんて、どぶに捨てるようなものですよ」
#4刑務所
ガニマール「君はルパンかね」
ルパン「そうですよ」
ガニマール「にせものじゃないだろうな」
ルパン「正真正銘、僕ですよ」
ガニマール「君がつかまったとき、正直わざとじゃないかと疑ったんだがね」
ルパン「おもてなしできなくて残念だなあ。冷たい飲み物ひとつないんだから!いや、本の仮住まいですよ。出て行きたくなったら出て行きます」
ガニマール「それにしては、ずいぶん長くいるじゃないか」
ルパン「ある、女性のことを忘れなければいけないんです・・・。美しい人だった。この恋の傷を癒さなければならないときに、俗世間の荒波は厳しすぎる・・・。隔離療法ってやつですよ!」
ガニマール「君は刑務所を何だと思ってるんだね!もういい、どうやら本物のようだからな」

#5 カオルン男爵邸夜
夫人「この屋敷には、二つの門があります。入り口はその二つだけです」
ガニマール「あの井戸へ通じる道は?」
夫人「地下道があったようですが、すでに埋め立てられています。」
ガニマール「肝心の絵はどこに?」
夫人「この隣の部屋です」
ガニマール「隣か。では私がこの部屋の扉を見張る。みんな、しっかりみはってくれたまえ、いいな!」
部下「はいっ!」
夫人「これで安心して眠れるわ」

#6 カオルン男爵邸朝
夫人「おはようございます、何もありませんでしたか?」
ガニマール「もちろん、誰一人来ていません。何も起こりませんでしたよ」
夫人、隣の部屋へ移動。
夫人「きゃあ!」
ガニマール「どうしました?」
夫人「絵が!絵がない!」
ガニマール「なに?そんなばかな!この部屋を見張っていた見張りは?」
召使「あの・・・寝ているようなんですが」
ガニマール「なに?おい!起きろ!!・・・だめだ、寝ているんじゃない。眠らされたんだ」
夫人「ルイ16世ゆかりの蜀台もない・・・マリアの聖母像も・・・(泣き出す)」
ガニマール「おのれ、ルパンめ!!」
夫人「私のコレクションの中でも粒よりのものばかりが・・・」

警察官がおきる
警察官「う、うーん」
ガニマール「おい!しっかりしたまえ!絵は盗まれてしまった!君は誰かを見なかったか?」
警察官「いえ、誰も見ませんでした」
ガニマール「じゃあ一体誰に眠らされたんだね?」
警察官「わかりません」
ガニマール「何か飲食したか?」
警察官「その、水差しのなかの水を少し」
ガニマール「そうか、その水を調べろ!それから屋敷にほかの入り口がないか、徹底的に調べるんだ!」

#7 刑務所
ルパン「やあ、これは警部、またまたお出ましいただけるとは」
ガニマール「ずいぶん愛想がいいな」
ルパン「ちょうどよかった、刑務所生活にも飽きてきたところだったんです。ところで要件は?」
ガニマール「カオルン事件だ」
ルパン「ちょっとまってください、なんせいろんな事件に関わっているものですから。ええと・・・ああ、あった!ルーベンス、ワトー、それから小物が数点」
ガニマール「事件は君が指揮したのかね」
ルパン「そうですよ」
ガニマール「ここにいながら?そんなばかな」
ルパン「そこに郵便局の領収書があるはずです」
ガニマール「君は毎日身体検査をされているはずだ、そんなものどうやって持ち込んだんだ」
ルパン「そうですね、確かに上着の裏地をほどいたり、靴の底を調べたり、身体検査は綿密です。けれど、誰一人、アルセーヌ・ルパンがそんな簡単な隠し場所を選ぶほどバカじゃないってことに気づかない」
ガニマール「予告状も君か。」
ルパン「もちろん」
ガニマール「あんな手紙を出すのが君の気晴らしかね?」
ルパン「まさか!男爵に手紙を出さなくても盗めるのだったらあんなことはしません。あの手紙が全ての出発点なのですよ」
ガニマール「なんだと」
(イメージ映像カオルン邸)
ルパン「絶対に侵入できない家に、僕がこっそりと忍び込んだとでも?」
ガニマール「それは不可能だ!」
ルパン「そう、不可能です。だから方法はひとつしかない、城の持ち主に、僕を招待させるんです」
ガニマール「ふふ、なるほど、かなり独創的なやりかただ!」
ルパン「財産を奪うというような予告状が来たら、警部ならどうしますか?」
ガニマール「警察に連絡するね」
ルパン「警察に連絡しても相手にされなかったら?」
ガニマール「誰か信頼できる人に、援助を要請するだろう」
(イメージ映像電話をかけるカオルン)
ルパン「そう、そして、カオルン夫人は、自分の絵を守るために僕の仲間に援助を要請することになる」
ガニマール「ますます独創的だな」
(イメージ映像カオルン&ガニマール)
ルパン「そして僕の仲間の一人がカオルン夫人を見張っている間に、残りの仲間が窓から荷物を運び出す、簡単なことです」
ガニマール「実に見事だ、しかし、誰なんだ、カオルン夫人がそんなにも信頼を寄せてしまう人物とは?私には思いつかない」
ルパン「あなたですよ」
ガニマール「なに!?わしだって?」
ルパン「そうです、だからおもしろいことにね、警部。もし警部が、カオルン事件の捜査に関わることになったら、自分で自分を逮捕しなければいけなくなるんです!」
ガニマール「笑うとはなにごとだ」
ルパン「これは失礼、しかしご安心ください。警部がカオルン邸に行くことはありません。捜査はまもなく打ち切りになります。」
ガニマール「なぜ?」
ルパン「にせガニマールが、今僕と取引してる最中なんですよ。まとまった金額で、絵を買い戻すってね。無事に絵を買戻し、カオルン夫人は告訴を取り下げます」
ガニマール「なぜそんなことがわかる?」
ルパン「その、卵ですよ」
ガニマール「朝食の卵か」
ルパン「割ってみてください」
ガニマールが卵を割ると、手紙が出てくる。
ガニマール「あっ」
ルパン「ははは、隠し場所ってのはこうじゃなくちゃ。なになに・・・話しついた。10億。まあ結構いい金額になったか」
ガニマール「10億だと!?」
ルパン「なんせ僕の経費はパリ市全体の年間予算に匹敵しますからね」
ガニマール「ほう、しかし残念ながら君はもうすぐ裁判にかけられるのだ」
ルパン「警部、私がこんなところで朽ち果てるとでも思っているんですか?来週水曜、あなたのお宅にうかがいます、葉巻をふかしながら話でもしようじゃないですか」
ガニマール「そうかアルセーヌルパン・・・では待っているぞ」
ルパン「ガニマールさん!時計をお忘れです」
ガニマール「時計?」
ルパン「ええ、僕のポケットに迷い込んできました」
ガニマール「おい!いつの間に!」
ルパン「すみません、つい悪い癖が。お返しします。僕がいつも使ってる時計はこっちですよ」
ルパン時計を取り出す
ガニマール「それは誰のポケットから迷い込んできたんだね・」
ルパン「だれだろう?あ、そうだ、確か、看守のブービエだ。なかなかいい人ですよ。」


※前半を会話形式にするため、カオルン男爵の出番をカオルン夫人+召使の会話にアレンジしました。
2018/02/22

ルパン逮捕される

概要(あらすじ)
ルパンシリーズ第一作。
客船「プロヴァンス号」の中でアナウンスが流れる。「船内にルパンあり・・・」。変装名人のルパンが船内にいる!? 一体だれがルパンなのか・・・。客どうしが、疑いあいのうずにまきこまれる。ルパンは金髪で右腕に負傷キズがある、それがヒントだ。
ルパンがいるときいて、不安におびえるネリー嬢と主人公は・・・。

読後の感想など
ミステリーとして完成度の高い作品。文章のスピード感と、意外な結末に圧倒され、次も読みたいと思わせる作品です。
ガニマール刑事も早速登場します。ガニマールはルパン三世でいえば銭形にあたる登場人物。
ルパンを逮捕することに執念を燃やす警察官です。
ネリーさんは、このあとの話でも登場するので要チェック人物です。

ちなみに、ルブランはもともと推理物のような大衆的な小説よりは純文学を志していて、ルパンをずっと書く気はなかったらしいです。そのため、一作目のタイトルが「ルパンの逮捕」になったそうです。
ところがこの作品でルパンに人気が出たため、ルブランはずっとルパンを半世紀にわたって書き続けることになります。

なお、この作品がルパン第一作にあたるのですが、日本で人気の南洋一郎氏の訳本では「奇巌城」を第一巻としています。そのため、ルパンといえば「奇巌城」というイメージを持っている日本人も少なくないようです。
「奇巌城」は悲劇なので、普段のルパンの作品のイメージとはかなり異なります。し、正直途中の経過は、冗長に感じる部分も多い作品です。(だってルパンが出てこないんだもん(怒)!)
しかし、ラストが強烈な作品なのと、18歳とはいえ少年がメインの登場人物になる作品なので、南洋一郎氏は、この作品を子供たちに推したかったのかな、と感じました。

収録された書籍
第一作だけに、入手できる書籍は多いです。電子版も多くあります。
偕成社全集版 第1巻「怪盗紳士ルパン」
新潮文庫ルパン傑作集(IV)「強盗紳士」
創元推理文庫「怪盗紳士リュパン」
ハヤカワミステリ文庫「怪盗紳士ルパン」
ポプラ社版第1巻「怪盗紳士
講談社青い鳥文庫「怪盗ルパン怪紳士」
岩波少年文庫「怪盗ルパン」
偕成社文庫「怪盗紳士ルパン」
早川書房ポケット・ミステリ「強盗紳士ルパン」
角川つばさ文庫「怪盗紳士アルセーヌ・ルパン」
2018/02/22

おそかりしシャーロックホームズ


概要
ドバンヌの屋敷には秘密の地下道に関する言い伝えがあった。ところが、その秘密の鍵を握っている年代記が、何者かによって盗まれてしまう。危機を感じ取ったドバンヌは、イギリスのシャーロックホームズに、事件解決の応援を要請するのだった・・・。

シャーロックホームズが、ルパンの小説に登場する。「遅かりし」という題名からわかるとおり、ホームズはルパンのライバルとして登場するものの、やられ役としての役割。

ホームズの登場は作者に無断で登場させたため、コナン・ドイルから抗議の文書が届いた。以後ルブランはシャーロック・ホームズ(Sherlock Holmes)の冒頭の"S"を後ろに移動させ(Herlock Sholmes)に改名した。しかし、日本語訳では「シャーロックホームズ」とするのが普通。

読後の感想など
もともとホームズファンだった私ですが、ホームズの登場については割り切って読みました(笑)。
この話ではまだソフトですが、ホームズはこのあとどんどんまぬけなキャラになっていきますので^^;
ホームズファンは、別人だと思って読んだ方が気持ちよく読めるかと思います。

みどころは、やはりネリーさんとのラブコメ(?)シーンです。
「明日4時にすべて元に戻します」は有名なせりふらしく、2004年の映画ルパン」でも引用されていました。

「紳士」な感じが伝わってきたり、「泥棒である自分」に悩むシーンなど。今までヒーローだった彼が、人間らしさを覗かせます。
ルパンは恋愛になると情熱的ですね(笑)。「冷静沈着な大泥棒」っていう触れ込みなのに、この大げさな求愛は・・・日本人が読むとキャラが急に崩壊してしまったようにも思えたのですが、^^;フランス人ですからね^^;グランデ・アモーレ!
愛が、だいじです^^;

入手できる書籍
ルパンシリーズ一冊目の「怪盗紳士ルパン」の最終話です。入手容易。各社の「怪盗紳士ルパン」には大体収録されています。ただし、少年少女向け文庫などでは収録話数を減らすためか、「怪盗紳士ルパン」収録作品を2冊に分けているところもあるので要注意。この作品を収録している書籍を一覧にしてみます。

偕成社全集版 第1巻「怪盗紳士ルパン」
新潮文庫ルパン傑作集(IV)「強盗紳士」
創元推理文庫「怪盗紳士リュパン」
ハヤカワミステリ文庫「怪盗紳士ルパン」
ポプラ社版第2巻「ルパンの大失敗」
講談社青い鳥文庫「怪盗ルパン真犯人を追え!」
岩波少年文庫「怪盗ルパン」
偕成社文庫「怪盗紳士ルパン」
角川つばさ文庫「怪盗紳士アルセーヌ・ルパン」
ストーリー(※思いっきりネタバレ注意!)

鳥羽(とば:原作名ドバンヌ 大金持ち)
鈴門(すずかど:原作名ベルモン 鳥羽の友人)
蟹間(かにま:原作名ガニマール 警察官)
音凛(ねりん:原作名ネリー 鳥羽の妹)
ルパン4世
シャーロックホームズ


● 2 船の上
蟹間「(観客に向って)君たち、旅行中に申し訳ないが・・・ルパンを見なかったかね。実はこの船にルパンが乗り込んでいるというんだ。有名な怪盗で、盗みをやりだしたら被害は計り知れないのだ。おっと、私は(警察手帳を取り出す)蟹間在。ルパンを絶対捕まえると公言している、あの有名な警官だよ。はっはっは」

そこにゲストが通りかかる
蟹間「ああ君、ルパンを見なかったかね」
ゲスト「ルパン?どんな人ですかね」
蟹間「どんな人かって・・・うーん、一概には言えない」
ゲスト「はあ???」
蟹間「(指名手配の画像を見せて)これがルパン(仮)!」
ゲスト「かっこかり?」
蟹間「そう、私は20回ほどルパンに会っているが、現れたのは毎回違う人間だった。これはあくまでやつの宣伝用の姿でしかない。変装と演技の達人でね。そのときどきで顔立ちもしぐさ、体つき、年齢、性別、性格までも違うのだ。」
ゲスト「それじゃあ探しようがありませんね」
ゲスト、立ち去り退場。
蟹間「今度こそ、ぜったいとっつかまえてやる!」
蟹間、退場。

● 3 ルパン4世
ルパン「どうして決まった外見をしていなくちゃいけないんだ?いつも同じ人物でいるなんて、まったく危険極まりない。手口を見るだけで私だとわかる。それでいいじゃないか」

● 4
ルパンがいる。そこに音凛がやってくる。音凛はばらを持っている。
ルパン、音凛に一目ぼれしてしまう。

音凛「ルパンが船に乗ってるってほんとですか」
ルパン「あ・・・いや・・・そういううわさですね」
音凛「ルパンがすぐそこにいるかもしれない、なんて怖いですね」
ルパン「いや、そのあなたの美しさに比べれば、ルパンの恐ろしさなど・・・」
音凛「(スルーして)はあ、こんなのがあと5日も続くなんて!」
ルパン「あなたが困っているならこの私が!ルパンを見つけ出して見せましょう!簡単ですよ」
音凛「ずいぶん自信があるんですねえ」
ルパン「なんのこれしき、美しい女性のためならたとえ火の中水の中。美しい二人の思い出にぜひそのばらをもらえませんか」
音凛「荷物少ないんですね(ルパンの鞄を持ち上げる)」
ルパン「あ~~~それは・・・まあいっか」
そこに蟹間がやってきた
蟹間「アルセーヌ・ルパンだな」
ルパン「違いますよ!安藤金也(あんどうかねなり:原作名ベルナール・アンドレジー)ですよ。ほら、身分証も」
蟹間「安藤金也は、三年前死んでいる」
ルパン「ええ、じゃあ僕しんでるってこと」
蟹間「どうやって、その身分証を手に入れたかは知らないが、つべこべいわないで観念しろ」
ルパンに手錠をはめる
音凛の前で手錠をはめられ、はずかしいルパン。
蟹間「(音凛の持っている鞄を見て)その鞄に証拠の品が入っているはずだ、こっちに渡しなさい」
ルパン「(ひとりごと)まっとうな生き方ができないっていうのもせつないねえ。こうやって美女と出会っても次に会えるのはいつのことか・・・」

音凛、ルパンと蟹間を見比べ
音凛「あっ、手が滑った!」
鞄を投げる。自分をかばった音凛に驚くルパン。
(海に荷物が沈む音)
音凛、ばらを残して、その場を立ち去る。
蟹間「あ、こら!」
ルパン「ちょうど船も着いたようだし、それじゃあさいなら、美しいあなた、また会えるひまで」
いつのまにか外していた手錠を蟹間に渡して、バラを拾い上げ走り去る。
蟹間「おい、こら!ルパン!まて~~~~~っ」


● 5 鳥羽の豪邸
鈴門:えっ、明日かの有名な探偵のシャーロックホームズが来る!?
鳥羽:そうなんですよ、鈴門さん。
鈴門:それまたいったいなんで?
鳥羽:実はこの鳥羽家の屋敷には言い伝えがあって。極秘の地下道があるらしいんです。ところが図面は紛失しており、どこに地下道があるのかがわかりません。祖父の代までは代々言い伝えられてきたのですが、その祖父は東京の空襲で急逝してしまったため、今は真実を知るものが誰もおりません。
鈴門:でもなぜ急に探偵を呼ぼうなんて考えたの?
音凛:ルパンから予告状が来たんですよ。だからおねえちゃん、躍起になって。
鈴門:音凛!ほんとあんたは口が軽い・・・まあそういうことなんですよ。この屋敷の財産をねこそぎいただくって。鳥羽家は明治時代に財産を築きました、財閥の解体でその影響力はいくぶん小さくなったものの・・・ルパンなんぞに財産を渡すわけにはいきません!ルパンはきっと地下道を見つけたんです。そこを通ってやってくるに違いありません。
鈴門:それは大変!地下道を早く見つけなければね。手がかりは全くないのですか。
鳥羽:調べたところでは、鳥羽一族の「財産記録」のなかに、先祖が手がかりを記したとありました。一応見てみたのですが、意味不明な言葉が並んでいるだけで。
音凛;斧は旋回す、震える空に。されど翼はひらき、人は神のもとへいく。暗号みたいですよね。
鳥羽:暗号なのか、旋回する斧とか、飛ぶ鳥ってなんなのか。全く謎なんです。
鈴門:ですね。
鳥羽:まあ、ホームズが来るまで少々おくつろぎください。鳥羽家自慢のアーティストのおつきですよ。謎解きは、演奏のあとで。


● 8 誰もいないやしき
ルパンが中に入ってくる。つぎつぎと、高価と思わしきものを持ち去る。
最後に宝石箱をとろうとしたとき、がたっと音がして、ルパンはカーテンの陰にかくれる。

音凛が入ってくる。
音凛「誰かいる、出てきなさいよ!」
おそるおそる部屋を見渡しているが、思い切って一気にカーテンを開ける。
ルパンと目が合う。
音凛「あなたは!」
ふたり、驚き、沈黙。
ルパン、持っていた宝の一つを取り落とす。
その音にふたりともはっとわれに返る。
ルパンが一歩歩み寄ると、音凛は一歩後ずさる。
音凛「誰か来る・・・早くにげて」
ルパン「明日の16時、かならずすべてもとにもどしておきます。どんなことがあろうと、約束はかならず守ります」
音凛「早く!」
音凛が足音のするほうに気をとられ、振り向くとすでにルパンはいない。

ルパンの独白「あのときあなたは、『もし本当にこの人がルパンだったら』そう思って海に鞄を投げ捨てたんだ。けれど今度は現行犯だ。君にとって僕は、今後どんなことがあろうともずっと泥棒なんだ。他人のポケットに手を入れ、こそこそと逃げ出す男なんだ」

● 屋敷
蟹間「え~つまり、ルパンから予告状が来たのが一昨日、そして夜の間に宝が根こそぎ盗まれた、窓は壊されていないしドアもこじあけられなかった、荷物はどこか秘密の出入り口から運び出されたにちがいない。そういうことですね」
鳥羽「そのとおりです、あ、友人の鈴門と妹の音凛も確認してます」
鈴門「そう、私も昨日までお宝がここにあったのを見ました」
蟹間「音凛さんはなにかきづいたことは」
音凛は時計を気にしている。
音凛「え?あ、ありません。」
ピンポーンとチャイムが鳴る
声「宅急便です」
音凛「16時だ」
ドアを開けると、誰もいない。すべてのお宝が、そこに積まれている。
鳥羽「戻ってきた!宝が全部!戻ってきた!よかった!よかった!」
宝を部屋に運び込む鳥羽。
音凛、ルパンを追いかけ外に飛び出す。

● 屋敷の外
音凛があたりを見渡している。ルパンを見つける。
ルパン「僕は約束を守りました」
音凛「・・・」
ルパン「あなたとお会いしたのは、プロヴァンス号のデッキでした。過去はなんと遠く感じられることでしょう。昨晩見た僕は、僕じゃない!あのころのことを思い出し、昨日見たことは忘れてくれませんか」
音凛「・・・」

ルパン「すみません、アルセーヌ・ルパンはこれからもアルセーヌ・ルパンでしかない。すみませんでした。僕がそばにいるだけで、あなたに対する侮辱になってしまうんですね」
音凛が通り過ぎる。ルパン、引き止めようとしてやめる。
音凛が見えなくまで見送っている。

ふと、音凛がいた場所に置かれているばらに気づく。

そこにホームズが通りかかる

ホームズ「すみません、鳥羽さんのお屋敷はこちらの道でよろしいでしょうか」
ルパン「まっすぐです。みなさんおまちかねですよ」

しばらくの沈黙。

ホームズ「では、のちほど」
お互いに相手の正体に気づきながら、にらみつけあって立ち去る。

● 鳥羽家
ホームズがチャイムを鳴らす。
鳥羽「はい」
ホームズ「にゃーろっくほーむずです」
鳥羽「にゃーろっく?」
ホームズ「線が一本足りないだけです。気にしたら負けです」
鳥羽「これはこれは!ようやくおいでくださいましたか!実は盗みは昨晩すでにおきてしまいまして」
ホームズ「知っています。私がくるなどといわなければよかったのに」
鳥羽「なぜそれを知って・・・ああ、さすがは名探偵!しかし宝は戻ってきたのです」
ホームズ「え?」
鳥羽「さっき、16時に宅急便で帰ってきたのです。まったく謎だらけです、ルパンはどうやって侵入し、どうやって出て行き、なぜこの宝を返したのか」
ホームズ「あなたが暗号の話をしたのは妹さんだけですか」
鳥羽「はい。あ、あと昨日友人の鈴門さんとお話をしましたよ。鈴門さんも、警察の捜査につきあわせてしまって」
ホームズ「なるほど、あなたが自ら、ルパンに秘密の地下道のありかを解き明かす鍵を教えてしまったのですね」
鳥羽「私がルパンに謎を?・・・」
ホームズ「そうですとも、ルパンと、鈴門さんは同一人物ですから」
鳥羽「え?・・・あっ!!!私はなんてことを。あの悪党め!」
ホームズ「あの暗号こそ、ルパンがずっと捜し求めていたものだったんです。それをあなたが教えたため、その夜に、ルパンは謎を解き、この屋敷を襲った。」
ホームズ、床を調べて
ホームズ「ルパンは装飾品をこの椅子に並べていた形跡がありますね。それが、ルパンが盗品を返した謎を解く鍵でしょう。けれど今はそれどころではありません。大事なのは地下道です」
鳥羽「あなたの地下道の予想は?」
ホームズ「予想なんかじゃない、わかっているんです。屋敷から数百メートル以内に礼拝堂がありませんか。キリスト教の」
鳥羽「あります。今は廃墟となっているようですが」
ホームズ「なるほど、かんたんなことですよ。」
鳥羽「というと?」
ホームズ「はしご的なものありますか」
鳥羽「これでどうですか」
ホームズ「その、ティベルメニルと書かれているところに」
鳥羽「(台を置いて)これでいいですか」
ホームズ「はい、のぼってください」
鳥羽、台の上に登る。
ホームズ「Hの文字を触ってみてください。どちらかの方向に回転しませんか」
鳥羽「はい・・・あ、回りました!」
ホームズ「そこからRの文字、はいそれです、こう、まわしてみてください」
鳥羽「え?あ、こうですね!」
ホームズ「あとはちょっと台を動かして、Lの文字のところへ」
鳥羽「はい」
ホームズ「私の予想通りであれば、Lの文字が小窓のように拓くはずです」
鳥羽「え、あ、はい」
窓が開き、鳥羽がびっくりして転ぶ。
鳥羽「なるほど、ここが地下道の入り口だったんだ」
ホームズ「お怪我はありませんか」
鳥羽「すみません、びっくりしてしまって」
ホームズ「いえ、ご先祖さまの書き残したとおりですよ」
鳥羽「どうして?」
ホームズ「アッシュはフランス語でHのことですが斧という意味もあります。斧は回転する、でしたよね。エールはRですが、空という意味です。だから空は震える、でした。そしてLは開くとありましたから」
鳥羽「なるほど」
ホームズ「地下道を、進んでいきましょう。礼拝堂に出るはずです。神のみもとへ来る、ですから」

● 礼拝堂
鳥羽「礼拝堂に出ましたね。すばらしいです、ホームズさん!私も蟹間警部も、同じだけの手がかりを持っていながら」
ホームズ「君たちはただみているだけで観察していないんだにゃ。ただ見るのと観察するのとでは大違いなんだにゃ」
鳥羽「え、やっぱりにゃっていった?」
そこに、蟹間警部がやってくる。
鳥羽「蟹間さん!」
蟹間「さっき、鈴門さんと会ってね。君たちがここに来るはずだって言うもんだから」
鳥羽とホームズ、顔を見合わせる。
鳥羽「ルパンは、あなたには謎解きは朝飯前ってわかっていたんですね。それで蟹間さんを迎えによこしたんだ」
ホームズ「てごわいやつです、一目見てわかりました」
蟹間「え、ルパンに会ったんですか!」
ホームズ「ええ」
蟹間「なぜつかまえなかったんですか!!!」
ホームズ「私は刑事じゃないですから。」
蟹間「ああ、そっか・・・くそ、ルパンのやつめ!絶対つかまえてやる!何歳になったって、絶対諦めないからな!」


蟹間「あ、そうそう鈴門さんがこれを、ホームズさんにって」
小包を渡す
ホームズ「警部、鈴門さんがルパンですよ」
蟹間「え!なんだって!そういうことか、くそ~絶好の機会をまた逃してしまったか」
ホームズ、小包を開ける
ホームズ「親愛なるシャーロックホームズ様、アルセーヌルパンより・・・ってこれ私の時計!!いつのまに!あ、すれちがったときにやられたか・・・」
鳥羽「これは貴重ですよ!ルパンが盗んだホームズの時計!やつもなかなかのものですね!」
ホームズ「そう、てごわいやつです。アルセーヌ・ルパンとこのシャーロックホームズは、いつかまた再会するでしょう。世界は狭いですから。そのときには・・・」


※ストーリーは、わかりやすいよう一部簡略化しました。日本人名にしたのは、私が外国人の名前だと全然覚えられなくて、何度も読み返してしまうからです。また、1話読んだだけで全容がつかめるよう、登場人物の自己紹介シーンなどを追記しております。



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